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村の若い男だと

こうやってイワンが基になった絵本を参考にして新しい絵本を作るというのも、今のこの世界じゃ別に問題になることじゃなかった。だから、


『前世じゃ著作権で禁止されてるからダメだ!』


とは別に言わないさ。村で当たり前のように子供に対する虐待が行われていることに対して俺が露骨に口出ししないのと同じだよ。


<そういう世の中>


なんだ。今はまだな。これも現実なんだ。受け止めなきゃいけない現実だ。


けどな、そんな世の中だって、


『子供を生む時に子供に直接承諾をもらったわけじゃない』


『人間が生むのは人間であって家畜を生むわけじゃない』


ってのはやっぱり現実だろ? なら俺はそれと向き合うだけだ。


だから、マリヤがぐずっても俺は怒鳴ったりしねえ。親の勝手でこんな世の中に生み出されちまったんだ。そりゃ泣きたくもなるってもんだろ。だったら泣けばいい。マリヤがいくら泣いても俺は傍にいる。


「俺のところに来てくれてありがとう、マリヤ。愛してる……」


言いながらマリヤをあやす。そんな俺の姿を、リーネが見てる。そして、


「私にもやらせてください」


と言ってきた。そんなリーネももう二十代半ば。はっきり言って<アラサー>である。こっちの世界じゃ<いき遅れ>もいき遅れの<いかず後家BBA>だよ。


けどな、それの何が悪い? 村にはリーネの相手に相応しい男なんていやしねえしよ。どいつもこいつもロクデナシだ。自分がガキの頃にやられたことを自分の子供ができたらやってやろうと手ぐすね引いてる、な。そんなロクデナシにリーネを任せられるか!


そういうロクデナシに目を付けられたりしないように村には行かせなかったのが功を奏したか、言い寄られることもなくここまでこれた。まあそれに、歳は離れてるがトーイもイワンもいる。この二人でダメなら、リーネが好きになれるような男はもうこの世にゃいないだろ。何しろ二人は見た目だって決して悪くないしな。トーイはいかにも頼りがいのありそうな<男らしい男>になってきてるし、イワンは足は悪いと言っても<甘いマスクの優男>なんだよ。


と、三人のことを一番近くで見てきた俺としては、思う。トーイもイワンも、間違いなくリーネのことを大切にしてくれる。ちゃんと人間として扱ってくれる。そしてもしリーネとの間に子供ができたら、その子のことも大切にしてくれるのが、カーシャやマリヤへの態度で分かる。カーシャがまだ赤ん坊だった時も、今のマリヤに対しても、泣いてたりするからって怒鳴ったりしないんだよ。


『自分の思い通りにならないことに対しても理性的でいられてる』


ってことだ。これが村の若い男だと、


『自分の思い通りにならないことがあるとすぐにキレる』


ってのが普通なんだよなあ。



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