お父さんもカーシャのこと
「тато、カーシャね、татоだいすき♡」
夕食の時、俺がカーシャに食べさせてやってると、彼女はそんなことを唐突に口にした。でも、幼いうちはそんなもんだろうと思う。<間の取り方>とか<流れの読み方>とか<空気の読み方>とか、そんなものも今まさに学んでいってるところだろうからな。言葉も上手くしゃべれないのと同じで、まだまだそういうのも身に付いてないだけだ。
だから俺は、
「そうだね。お父さんもカーシャのこと、大好きだよ♡」
ちゃんと彼女の言葉に耳を傾ける。
どうだ? お前の親はこれをしてくれてたか? 子供がいるなら、これをやってるのか? 自分の思い通りにならないからってキレたりしてないか?
相手はまだ、<間の取り方>とか<流れの読み方>とか<空気の読み方>とかを学んでる真っ最中だ。だから上手くできねえ。当たり前だろうが。そうやってこっちの都合に合わせられないことにいちいちキレてちゃあ、
『自分の都合に合わせてくれない相手にはキレていい』
って学び取っちまっても当然じゃねえか?
これに心当たりはねえか?
俺には心当たりしかねえな。ゆかりが阿久津安斗仁王に対して反抗的な態度をとってたのも、
『気に入らない相手には露骨に嫌悪感をぶつけていい』
ってのを阿久津安斗仁王自身がゆかりの前でゆかりに対してやってからな。完全にそれが返ってきてただけでしかねえ。
ゆかりが阿久津安斗仁王に対して見せてた態度は、結局のところほとんど全部が阿久津安斗仁王がゆかりに見せてた態度なんだよ。あとはまあ、女房がゆかりに見せてた態度だろうな。
つまり、阿久津安斗仁王と女房のミックスなんだ。ゆかりの振る舞いは。
そう考えると、阿久津安斗仁王の振る舞いも、その両親のミックスってことだな。
はっはあ!! 見事にその通り過ぎて笑うしかねえよ!!
普段は外面を取り繕ってる奴も、ネットとかで他の奴にとってる態度は、そいつの両親のミックスだろうぜ!
かかか!! ざまあねえぜ!! どんなにいい人ぶってても、自分の子供が他所様に見せる振る舞いが親の本性ってこった!! 残念だったな!?
っていかんいかん。こういうのをリーネやトーイやイワンやカーシャの前で見せてたら、それを学び取っちまう。俺の本性を見透かされてても、それをリーネやトーイやイワンやカーシャになるべく見せねえように振舞う姿を見せるのが大事なんだ。
そう、『他所様に見せない』じゃねえんだよ。『自分の子供に見せない』ことが大事なんだ。
もっとも、それがあんまり嘘くさいのだったらダメだろうけどよ。




