お父さんと同じ仕事が
もちろん、それで完璧にコミュニケーションを取れるようになるとは限らねえ。けどな、最初っから教えもしねえで、
『誰かが教えてくれるだろ』
ってえ寝惚けたことを考えるよりはマシだと思うぜ?
何てことを思ってると、トーイが、
「僕も、お父さんと同じ仕事がしたい……」
と言い出した。
「鍛冶の仕事か…?」
問い返すと、
「……」
黙って頷く。そうか。なるほど勉強しなくなったのは、俺の仕事を継ぎたいと思うようになったからか。
そこにリーネが、
「実は、トニーさんが村に行ってる間、真似をして鉄を叩いたりしてたんです」
と教えてくれた。まあでも、俺も薄々察してはいたんだけどな。たまに道具の位置が微妙に違ってたりしたし。リーネが家の掃除をしてる時にうっかり動かしてしまったりしたのかと思って何も言わなかったんだが、やっぱりそっちの理由もあったか。
俺としちゃ勉強もちゃんてしてほしかったものの、まあここまでだけでもすでに村の連中よりも読み書きはできるようになってたし、本人が望むならそれでいいかな。
「分かった。楽な仕事じゃないのは見てれば分かるだろうしそれは覚悟の上だということだな? なら、明日から早速、手伝ってもらうぞ。まずは村に行って納品と注文を取るところからな」
「うん」
真っ赤に焼けた鉄を槌で打つ姿は、特に男の子からすりゃカッコよくも見えたりすることもあるだろう。それを志望の動機にするのは決して不純じゃないと俺は思う。けど、<仕事>ってのは、見えてる部分だけで成立してるわけじゃねえのも事実なんだ。カッコよく槌を振るってる部分だけじゃなくて、作った物を納品したり注文を取ってきたりってのも、<仕事>の内なんだ。
まあ、そっちについちゃ誰かに任せて自分は鍛冶仕事だけに集中するって方法もあるけどよ。でも、少なくとも今の俺達にはそれを分担できるのがいない。リーネには家のことをしてもらわなきゃいけないし、イワンはまだ両親をはじめとした村の連中への恨みが強くてその段階じゃないしな。カーシャは言うまでもなく無理だ。
となるとトーイには、今の俺と同じように、鍛冶仕事と納品・注文取り両方をできるようになってもらわなくちゃ話にならない。
そうして翌日、俺は、トーイも伴って村に下りた。
「今日から俺の仕事を手伝ってくれることになったトーイだ。よろしく頼む」
と、村の連中にトーイを紹介する。
「よろしくな、トーイ」
って感じで愛想よく迎え入れてくれるのもいるが、中には何とも微妙な表情をする奴もいた。要するに俺が子供を慰み物にしてるって噂を真に受けてる奴なんだろう。でも、そんなもん、気にしても仕方ねえさ。




