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面倒臭かったんじゃないか?

リーネは問う。


「トニーさん。どうして村の人達はトニーさんと同じにできないんですか? 私の両親も叔父や叔母も、どうして同じにできなかったんでしょう?」


それに対して俺は、


「まあ、俺の場合はたまたまそれを教えてくれたのがいたってだけだよ。で、俺は素直にそれが聞けたってだけだ」


と、


『正確じゃないが嘘は言ってない』


って形で応えた。『教えてくれたのがいた』ってのは、前世の俺自身のことだ。前世の俺自身の失敗について客観的に検証したら今の考えに至ったってだけだ。前世の八十年分の人生経験そのものが俺の<教師>であり<反面教師>なんだよな。


だがそれをそのまま説明したっておかしなことになるだけだしな。ただの<オカルト>になっちまう。だから言い方を考えたんだ。


だけどリーネはそれに対して、


「じゃあどうして、他の人はトニーさんみたいに聞けなかったんでしょう?」


とも訊いてきた。前世の俺はこうなるとたぶん、


『知るか! 他の奴らが馬鹿だったってだけだろ!』


的な言い方をして誤魔化してたと思う。と言うか、面倒臭がってただろうな。本来なら『分からないことを訊いてくる』ってのは大事なのに、訊かれたことにいちいち答えるのを『メンドクサイ』と考えて逃げてたんだ。


おいおい、せっかく相手が訊いてくれてんのにそれはないだろう? そういうのはただの<甘え>って言うんじゃないのかよ?


分からねえことは分からねえんだからちゃんと答えろよ。教えろよ。それをしないってのは<怠慢>ってもんだろうが。


だから今の俺は、


「そうだなあ。面倒臭かったんじゃないか?」


とだけ答えておく。露骨に馬鹿にはしない。ついつい『面倒臭い』と感じてしまうのは、人間なら誰でもあることだろう? するとリーネは、


「そうかもしれませんね」


と言ってくれた。ここで俺が、あからさまに他の連中を馬鹿にして見下して蔑むような態度を取ってたら、リーネはともかくまだ八歳とかそこらのトーイやイワン、まだ実年齢は三歳にもなってないカーシャも自分と考えが合わない相手を馬鹿にして見下して蔑むのが当たり前だと思うようになるかもしれねえだろ? だから俺はそれをしないようにしてるんだよ。


単純な話だ。


そういうことについて、リーネは俺と対話ができるようになってくれた。それが嬉しくて、ついつい話が弾んでしまう。


「俺はな、『他の人間を敬う』ってことができなくて周りの人間に疎まれて、それで一人寂しく死んでいった奴の話からいろいろ教わったんだ」



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