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いただきます

「みんな、ゴハンですよ♡」


今日もリーネは、家族のために食事を作ってくれる。『女だから』じゃない。『リーネだから』任せてるんだ。トーイは、手伝ってはくれるものの明らかにリーネのように器用にはできないし、イワンはトーイよりは器用で手伝いも巧いが、だからといって料理そのものが巧いかというと、どうも違うらしい。<器用>なのと<センス>があるととは別物だってことだろうか。まあ、そうなんだろうな。


だから、<美味いメシ>を食いたいならリーネに任せるしかないし、リーネも喜んでやってくれてる。自分の仕事だと思ってやってくれてるんだ。そして俺はそんなリーネを尊敬し、労う。


『女なんだからそれくらいやって当然』


じゃなく、仕事としてそれをこなしてる彼女に敬意を払ってるんだ。社会人としな。


それぞれできることを手分けしてやることで人間の社会ってのは成り立ってる。家で料理を作るのだってその一つだ。労う気がないなら自分のことは自分でするべきだし、任せるならそれを負担してくれてることに対して労いと感謝は必要だと思う。自分が仕事してるのを労ってほしい感謝してほしいと思うなら、自分も、自分の代わりに何かの役目を負ってくれてる家族を労い感謝しろ。それがまっとうな人間ってもんだ。


いやはや、前世の俺とは真逆だな。まったく。


「いただきます」


自分達の命を繋ぐ糧となってくれた食材に対する感謝と、そして料理を作ってくれたリーネに対する感謝を込めて、そう口にする。この辺りに伝わってた長ったらしい<感謝の言葉>と違ってそのシンプルな一言は、うちの家庭では当たり前の習慣になった。トーイもイワンもちゃんと、


「いただきます」


と言ってくれる。


「これは、遠い国の言葉で、自分達の命を繋ぐ糧となってくれた命を『いただきます』という意味と、料理ができるまでの間にそれぞれ手間を掛けてくれたすべての人間に対して感謝の意味の『いただきます』を同時に表現しているんだ」


俺がそう説明したら、


「すごいですね!」


リーネがいたく感心して、うちの習慣に取り入れたという感じでもある。まあ、そうでなくても俺がやってればその通りにするしかなかったというのもあるんだろうけどな。


でも、うちでの『いただきます』の言葉には、命への感謝とリーネへの感謝が込められてるのは事実なんだ。


こうして俺は、労わりと感謝の気持ちこそを、自分の軸にしていかなきゃと思ってる。それを忘れたら、俺は前世と同じ結末を迎えるだろう。


その実感があるんだよ。



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