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どのみち視力なんて関係ねえしな

一方でイワンは、そもそも手先が器用だという才能の持ち主でもある。だからリーネの料理の手伝いも巧いし、罠を仕掛けるのも巧い。


歩く時に足を引きずるのと、走るのができないのと、重いものを持てないってだけの話だ。ただそれは農作業をするには大きすぎるハンデになる。だから『使い物にならない』。


才能や能力ってのも、結局、それが活きる環境があってこそだなって思い知らされる。


じゃあ、カーシャはどうだ? 『目が見えない』ってのは、人間社会じゃ本当に大きなハンデだろうな。何しろ人間社会ってヤツは視力に頼り切った仕組みで成り立ってるからな、


だが、野生の動物には、視力に頼らない生き方をしてるのも少なくない。ということは、視力は、動物が生きていく上では絶対の能力じゃないってことだよな?


改めてそれを考えつつ、カーシャの世話をする。まだ赤ん坊である今の時点じゃどのみち視力なんて関係ねえしな。


だが、その分、俺の存在を感じ取れるようにしてやらなきゃと思うんだ。メシの時には膝に抱き、寝る時にもすぐ傍にいて、俺の気配が伝わるようにする。


自分がほったらかしにされてないっていう実感を、カーシャに伝えるんだよ。これが大事なんだって思い知らされるな。ちゃんと目が見えてる赤ん坊の場合なら見える位置にいればというのもあるかもしれないが、それでも、親がしっかりと気にかけてくれてるっていうのが伝わるのは必要だな。


人間以外の動物は、人間ほど知能は高くならないから、複雑な感情をいつまでも引きずることはできないかもしれないが、人間はそうじゃないからな。些細な恨みをいつまで経っても引きずったりしてることもある。子供の頃にイジメられたことをいつまで経っても根に持ってる奴とかいるだろ? 


まあ、加害者側の立場の奴はそれを馬鹿にしたりするが、いやいや、そういう奴だって自分がされた<嫌なこと>についちゃいつまでも根に持ってたりするじゃねえか。中学高校の頃に同級の奴をイジメてたのを<武勇伝>みたいに語ってた部下も、俺がやったパワハラについちゃ根に持ってたみたいでよ。退職した途端に疎遠になりやがった。散々、メシとかおごってやったってのに。


つまり、そういうことだろ? 自分がやらかしたことはさっさと許してもらいたい。でも、自分がやられたことについちゃいつまでも根に持つ。


人間ってなあそういうもんじゃねえか。だったら、子供が親からされたことをいつまでも根に持ってても何か不思議なことあるか?



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