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イワンの金

「イワンの絵本、二百五十で売れたぜ!」


エリクがまた村に来た時、開口一番、そう言った。


「マジか!?」


俺も思わずそう声を上げる。『三百でもいけるかも』というのはさすがにちょっと楽観視し過ぎだったが、二百五十というのは十分にいい値段だぞ。だからまた、イワンの写本をエリクに渡す。これも装丁屋に持ち込んで綺麗に装丁してもらって普通に絵本として売るんだ。


そして先に売れた絵本の代金は、七割の百七十五をエリクが、三割の七十五を俺が受け取り、<イワンの金>として保管しておく。


もしかすると実は三百で売れてたのをエリクが『二百五十で売れた』と言ってるんだとしても、別に構わない。こいつがそんなケチな真似をする奴だったら、軽蔑するだけだ。そして、こっちでも販売ルートが確立できたら切り捨てる。そうじゃなきゃこれからもずっとエリクを通してもよかったが、こっちの信頼を裏切るんなら儲けさせてやる義理もねえ。って話だ。


それが信用ってもんだろ?


商売をするには信用が必要だ。それを投げ捨てる奴がどうなるか、ニュースとかまともに見てる奴なら知ってるよな?


まあ、信用とかどうでもよくて、目先の金さえ得られりゃそれでいいって奴は好きにすればいいさ。それが自分にどう返ってくるか覚悟の上ならよ。


だからエリクについても、こいつが俺の信頼を大事にするかそれとも目先の金を優先する奴なのか、これから見極めさせてもらうさ。


ちなみに、リーネとトーイが写本したものについては、やっぱり百でしか売れないそうだ。<才能>ってヤツは本当に残酷だな。ずっと先に始めてたのに、後から来たぽっと出の奴に簡単に追い越されることもあったりするんだ。その現実をここでも改めて思い知らされたぜ。


でも、それでいい。リーネとトーイには絵本作家としての才能はないかもしれないが、二人が俺達の生活を支えてくれてるのも間違いないんだ。それはかけがえのない二人の<才能>だよ。


分かりやすく金になるものだけが<才能>じゃねえ。


『家族の生活を支える』


ことだって立派な才能だと俺は実感した。だから二人には感謝してる。リーネが作ってくれる食事に舌鼓を打ち、トーイが沸かしてくれた風呂に浸かって疲れを癒す。


これでいいじゃねえか。


それにイワンが絵本作家として自立しても、それはあくまでイワン自身の生活のためだ。俺達が寄生するためじゃねえ。俺は俺で自分の生活を作り上げる。子供に寄生する親ではいたくないからな。



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