表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
281/398

自称・優しい人

イワンやカーシャを、リーネやトーイの承諾なく引き取ったことをあれこれ言う奴もいるかもしれねえが、子供を生む時だって先に生まれた子の承諾なんか取るか? 


『実の兄妹を作ることと、赤の他人の子供を引き取ることを一緒にすんな!』


とかホザく奴もいるだろうが、知らねえな。他所様の家庭の事情に何の権利があって口出しするのか分からねえ奴の寝言なんざ、聞こえねえよ。


それに、勝手なことをしてリーネやトーイの反発を受けることは、覚悟の上だ。加えて、イワンやカーシャにばかりかまけてリーネとトーイを蔑ろにするつもりもねえ。


下の子にばかりかまけて上の子を蔑ろにするような親の言うことなんざ聞く耳持たねえよ。


だが同時に、この調子で次々子供を引き取ってくるのもマズいと俺も分かってる。捨て犬や捨て猫をホイホイ拾ってきて飼いきれなくなって劣悪な飼育環境に陥るという本末転倒な<自称・優しい人>と同じになっちゃ意味がねえのも分かってる。


だから自制しなきゃならねえってのもな。


でも、だからこそ、自分で生きていけるようになってもらわなきゃとも思ってるんだ。


その辺りのバランスも考えなきゃな。


ただ、トーイはともかくリーネはもう、自分の力だけでも生きていけそうになってるとは感じる。カーシャの面倒まで押し付けようとはまだ思わないが、自分のことは自分でできるようになってるんだよ。家事はほぼ完璧だしな。


リーネがいるからこの家は回ってるってのもあるのは間違いない。だからこそ、


「いつもありがとうな」


と、ちゃんと口に出して労う。前世で女房やリサに対してはまったくしてこなかったことを、今はする。それをしなかったから後悔しかない人生の終わりを迎えたんだと思い知らされたからな。


高齢者施設にいた時にも、


『ガキは厳しく躾けるもんだ!』


とか考えて若い職員を『躾け』るんじゃなくて、ちゃんと労ってりゃ疎まれることもなかったんだって、分かるだろう?


その当たり前のことをしなきゃと思ってるだけだ。


そしたらリーネも、


「トニーさんこそ、いつもありがとうございます。私、トニーさんのところに来れて本当に良かった……♡」


なんて、嬉しいことを言ってくれるんだよ。女房やゆかりは言ってくれなかったことを、言ってくれるんだ。


前世じゃなんでそんなことにも気付かなかったのかねえ。俺は……


そんなこんなで、家のことはリーネに任せつつ、俺はカーシャを連れて村に下りる。村でも、カーシャに乳をくれる女に、


「いつもすまねえな」


丁寧に感謝するんだ。そしたら、


「いいっていいって。こっちも出過ぎて困ってるんだからさ♡」


言ってくれるんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ