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彼女が窮状を訴えてるのに

俺が仕事をしてる時には、カーシャは俺の背中側にカゴを置いてそこに寝かせてる。鍛冶の仕事でガンガンと五月蠅いものの、彼女はそれについては早々に慣れてくれたようだ。そして、俺の体が盾になることで、その上でカゴの上に覆いをして火の粉が飛んだりはしないようにしてる。


さらに、


「ふ…ふあ……」


ぐずり出したらすぐにウサギの胃袋で作った水筒に保存してある乳を与えたり、小便や糞をしていたら風呂場に連れて行ってさっさと洗ってやった。暖炉で常に保温してる状態だからな。レンガで作ってあるからか割と湯も冷めにくく、暖炉の火が消えてからでも完全に水になってしまってることもない。


だからちょうどよかった。風呂場自体、暖炉のおかげでサウナ状態で寒くないしな。


それもあってか、カーシャは、ここの乳児によく見られるような肌荒れがほとんどなかった。ぐずらないのは、肌荒れが少なくて不快さが少ないからというのもあるのかもしれない。肌荒れで痒かったり痛かったりすれば、当然、ぐずるだろうしな。


そうして綺麗になったらまた母屋に戻って俺は仕事を再開する。


『リーネにやらせりゃいいじゃねえか』


と思うかもしれないが、それはリーネに責任を押し付けることになるだけだ。それに、リーネにも少しずつ手伝ってもらって、やり方を学んでいってもらってる。丸投げするんじゃなくてこうやって徐々に学んでもらうだけでいい。嫌でも大人になって子供作ればやる羽目になるんだからよ。その時に、


『そう言えばこんな風にしてたな』


って思い出してもらえればそれでいいんだよ。やり方が分からなくて苛々されたりオタオタされたりしないように。


子供に子供の面倒見させて事故を起こされてちゃ意味がないだろ。しかもその責任を子供に押し付けようとか、何のつもりだ。自分が手を抜きたいから押し付けておいて、その上、責任までおっかぶせるのか? 正気の沙汰とは思えないな。


俺はそんな大人でいたくねえぞ?


いずれにせよ、カーシャは元気に育ってくれてる。目は見えてねえが、生まれつきそうだから、本人には『目が見える』という感覚はそもそも生じないだろう。耳や鼻や触覚という、他の感覚でこの世界というものを知覚していくだけだろ。


その中に、俺という存在が大きくあって、そのことが安心感になってりゃそれでいいんだよ。


そして俺は、カーシャが機嫌よくしてる間に集中して仕事を行うようにした。で、彼女がぐずり出したら、


「どうした? カーシャ」


と穏やかに声を掛けるんだ。彼女が窮状を訴えてるのに無視したりはしない。


そんなことしてて信頼が得られるか。



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