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怖いものが現れたらこのザマだ

だが、まさか、


『でかいクモが怖い』


ってのを口にしたからってわけじゃないだろうが、翌朝、俺は目が覚めた瞬間に何とも言えない気配を感じ取ってしまった。


なんだろうな。自分にとって<良くないもの>だから、敏感になってしまうんだろうか。


視界の隅に捉えられた途端に、正体を察してしまった。で、


「ぎゃあーっっっ!!」


俺としては、『ぎゃーっ!』って叫んだつもりだったが、どうやら実際には、


「きゃーっっっ!!」


って感じの、女性の悲鳴みたいなそれだったらしい。我ながら情けない。


でも、掌サイズのでかいクモが、一メートルもない距離にいきなりいたら、普通はビビるだろ。しかも寝起きで。


「ひゃっ!?」


「っっ!?」


俺の悲鳴に驚いて、リーネとトーイも飛び起きた。その気配にクモの方も驚いたか、壁の隙間に潜り込んでしまった。その隙間のすぐ向こうは外のはずだ。だから幸い、外に逃げてくれたわけだ。


「ど、どうしたんですか!? トニーさん!?」


リーネが心配して問い掛ける。そんな彼女の気持ちが俺を落ち着かせてくれる。


「いや、すまん。さっき、でかいクモがいてな……!」


変な見栄を張ることもなく、俺は正直にそう話した。ここで見栄だのメンツだの言って誤魔化そうとする奴の方が情けないと思う。


怖いものは怖い。苦手なものは苦手。その事実を認めた上で、じゃあ具体的にどう対処するか?ってのが大事だろ? 場当たり的に誤魔化すだけで解決できるなら、誰も苦労はしない。


しかし、


「え……っ!?」


リーネも怯えた様子で体を竦ませて家の中を見回した。だが、そのクモはもういない。


「大丈夫だ。壁の隙間から外に逃げて行った」


俺の言葉に、


「よかったぁ……」


心底ホッとしたという様子でリーネが胸を撫で下ろす。そんな彼女の姿を見てると、俺もさらに落ち着けて、


「ごめんな。びっくりさせて」


悲鳴を上げてしまったことについて素直に謝れた。俺より非力なリーネが怯えてるんだ。怖いのは怖いとしても、女の子と同レベルに怖がってはいられないよな。さすがに。


なので俺はベッドから下りて、クモがいた辺りを確認した。外に逃げていってくれたのは見たはずだが、万が一にも見間違いでまだ家の中にいたらパニックになりかねないからな。


しかし、内心では無茶苦茶ビクビクしながら近付いたものの、確かにどこにもいなかった。いやはや、恐ろしい。


そうして苦笑いを浮かべながら、唖然としてるトーイに、


「見たろ? 俺だって怖いものが現れたらこのザマだ。だから気にしなくていいんだ」


頭を撫でつつ言ったのだった。



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