ガラクタATM
そうだな。結局は、
『幸せを見付けられるかどうか?』
で納得できる人生だったかどうかが決まるんだろうな。とはいえいくら、
『幸せになれたもんの勝ち』
とか言われたって自分が幸せじゃなきゃそれが果たして勝ちなのかどうかも分からないよな。まあ、
『人生ってのはそもそも勝ち負けを競うものじゃない』
って話もあるんだが、それは取り敢えずここでは脇に置いて、前世の俺と今世の俺とでどっちが納得できる人生を送れてるか?って話をするなら、間違いなく今世なんだよ。清潔で安全で便利な生活ができてたのは比べるまでもなく前世だし、好き勝手に生きられてたのも前世だった。
そりゃそうだよな。形の上だけでも結婚して子供も作って、結婚もできなきゃ子供も持てない連中相手にマウント取れて、その上で家庭をほったらかしにして<都合のいい女>と暮らして調子のいいことをホザいてられたんだ。なるほど『楽しかった』だろうさ。
人間としちゃクソみたいな生き方でもよ。
だから愛想を尽かされた。誰からも信頼されなかった。誰からも敬ってもらえなかった。これが社会的に評価されるようなすげえ才能を持ってて大きな功績でも残してりゃまだ違ったんだとしても、俺みたいな<会社の歯車>風情がそんなマイナス点ばっか積み上げてて誰が尊敬してくれるって?
でも今は間違いなく、リーネとトーイが俺を慕ってくれてる。俺と一緒にいることで安心してくれてる。だが前世じゃどうだった? 女房もゆかりも、俺の事なんざATMとしか、しかもまともに金も吐き出さないガラクタATMとしか思ってくれてなかった。リサでさえ、最初の内だけだったな。俺と一緒にいるのを喜んでくれてたのは。
そりゃそうか。ただただ、
「メシ」
「風呂」
「寝る」
で、たまに自分勝手に抱くだけだったしな。完全に、
<家政婦兼性欲処理係>
扱いじゃ、そりゃ気持ちも冷めるさ。当然だろ? 人間扱いしてないんだから。
対して、リーネやトーイのことはちゃんと人間扱いしてるんだよ。人間と見做して人間として敬って人間として労わってる。自分が人間として扱ってもらえなくて嬉しいか? 女房やゆかりにATM扱いされてて俺は嬉しかったか? 嬉しいわけねえだろ。
その当たり前のことに気付けてそれを実行したのが今なんだよ。
便利でも快適でも安全でもないこんな暮らしで幸せを感じられてんだよ。
夕食を済ませると今日も風呂に入る。暖炉の火を絶やさないようにずっとリーネが管理してくれてた。その上で食事の用意や勉強とかしてたんだ。
ホントに頭が下がるって。




