農閑期の間に
冬の間に、農閑期の間に、俺は様々なことを試した。レンガで雨水を貯めておくための貯水槽も作った。これで、飲み水は別として、鍛冶や風呂で使う水はわざわざ汲んでこなくても済むと思う。さらに、木の樋を張り巡らせて、貯水槽から樋を通して新しい風呂に水を注げるようにしたことで、水汲み作業がかなり楽になった。
さらにさらに、新しい風呂で沸かした湯を、最初の風呂に注げるようにもした。これがマジで役に立つようなら<湯沸かし器>の方が無駄になってしまうかもしれないものの、別に構わないさ。工夫によって先に作った物が要らなくなるなんてのも普通のことだと思うしな。
ただ、致命的にセンスがないから、これがまた不細工で不細工で。子供がお菓子の空き箱とかで作る、
<ロボットの秘密基地>
みたいになったな。継ぎ接ぎだらけだわ、レイアウトがメチャクチャだわと。
しかも、造形が面倒なところはモルタルを粘土みたいにして使ったのが見た目にもちぐはぐで、酷い有り様だよ。
それなのにリーネは、
「便利でいいじゃないですか♡」
と言ってくれる。さらにトーイは、それこそ<男の子>だからか、
「かっこいい……!」
とまで言ってくれるんだ。
まあ、リーネやトーイがそう言ってくれるのは、比較対象がないからだってのも分かってる。ちゃんとした比較対象があればこれは評価しようがないだろ。
それでも、悪い気はしない。父親として子供に尊敬してもらうのなんて、結局はこういうことでいいと思える。
『子供にはできないことが大人にはできる』
というのは事実だ。子供は大人を持ち上げられないが、大人は子供を持ち上げることができる。たったそれだけでも、子供から見れば、
『大人はすごい』
って思える気がするんだよ。なのに、そういう『大人はすごい』って子供が感じる部分を台無しにしてあまりある<駄目な部分><ロクでもない部分>が目に付いちまうから、幻滅される。愛想を尽かされる。嫌われる。反発を招く。
<前世の自分>という、あまりと言えばあまりにも絶好の<見本>が俺にはあるから、嫌になるくらいにそれが分かっちまう。
前世の俺に今世の俺と同じことができなかったかと言えば、できなかったはずはないんだ。ただ『やらなかっただけ』で……
マジで、前世の俺はなんでこれをやらなかったんだろうな。『知らなかった』というのが一番の理由だとは思うが、
『知らないんだからできるはずがない』
とか言い訳するんなら、
「お前は一から十まで教えてやらなきゃなんにも分かんないのかよ! お勉強ができるはずのその頭は何のためについてんだ? 自分で考えろ! これだから学歴しか取り柄のないバカは……!」
てなことを、俺よりいい大学を出た新人とかに言っちゃ駄目だっただろ……




