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腹ごしらえが済んだら

俺は、捌いたイノシシの肉に、串代わりの木の枝を刺して、焚火の傍に立てた。すると、途端にじりじりと肉が焼ける音と共にいい匂いが広がっていく。久しぶりの肉だ。まともなメシだ。できれば調味料と白飯が欲しいところだが、さすがにそれは無理だけどな。


それでも、いい感じに焼けたものを手にとって、


「ほれ、食え。遠慮すんなよ」


やや命令口調でリーネに渡した。


「はい……」


彼女も、遠慮がちにおずおずと手を伸ばして受け取って、俺が自分の分にかじりついたのを見届けてから食べ始めた。


「二人で食うんだから、好きなだけ食べろ、どうせ食べきれないんだからな」


そうだ。百キロ以上ものイノシシなんて、二人じゃ食い切るのに何日もかかるだろう。可能なら干し肉にでもして保存したいところではあるものの、そこまで手間を掛けている余裕もない。いつまた他の獣に遭遇するかも分からない。


腹ごしらえが済んだら、早々に移動しなきゃな。




そうして腹が満たされると、残ったイノシシはそのままにして、火の始末だけ、燃え尽きてくすぶってるところに小便を掛けて確実にして、さらに糞も済ませて出発した。もちろん、リーネにもその辺は済まさせておく。彼女自身はそれほど気にしてる風でもなかったが、まあ、遠慮して少し離れたところで待ったけどな。


イノシシの残りは、他の獣の餌になって糞になって山に還るだろ。


一方、リーネの方は、熱も下がったらしく、少しは足取りも軽くなったようだ。


とは言え、病み上がりには違いないから、俺も彼女の様子を窺いつつ、ゆっくりと進んだ。戦争については、こっちの方までは来ないようだ。はっきり言って<イベント>のような戦争だ。自分らの力を示し、自国民の不平不満の捌け口にできればそれでいいんだろ。俺達にとっては迷惑千万な話だが。


しばらく歩くと、また、沢の方に降りられる感じになっていたから、水を得るために降りていく。果実で凌いでたが、やっぱりがっつりと水も飲みたかったしな。


もちろん、滑落しないように慎重に。万が一、リーネが足を滑らせても俺が受け止められるように、俺が下になって。


が、その時、ふわりと<(にお)い>が。小便の臭いだ。まさかと思ったが、明らかにリーネの方から臭ってくる。


なるほど、熱を出して寝込んでる間に、寝小便でもしたのか。それからイノシシ騒ぎとかもあってそれどころじゃなかったから口に出せなかったんだな。


大人でも、深酒で前後不覚になって小便を漏らす奴はいる。子供ならそれこそ仕方ないだろ。


天気もいい。暖かくなってた。ついでに沢で洗濯でもするさ。



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