外れたのは外れたとして受け止めて
リーネやトーイに対して、今のこの世界じゃほとんど有り得ない接し方をしておいて、ブルーノや他の子供達を死なせるような連中と普通に接してる俺を、
『綺麗事ばっかりの口先野郎が!!』
と罵る奴もいるだろう。なるほどそれは事実だ。俺は綺麗事ばっかりの口先野郎だよ。確かにな。でもな、
『努力さえすればどうにでもなる』
なんてのもただの綺麗事でしかないのも事実なんだよ。<親ガチャ>って言葉にキレ倒す親にとって耳の痛い話をしてやろうか? 特に、
『結婚なんかするんじゃなかった!』
と後悔してるような奴にとって目一杯耳の痛い話だ。
お前、家族関係を良好に保つための努力を、本当にしたのか? 努力してないなら自分の子供に『努力しろ』とか言える資格はねえだろ。逆に、自分じゃ努力してたつもりなのに上手くいかなかったのなら、『努力さえすればどうにでもなる。なんてのは嘘』っていう何よりの証拠じゃねえか。ん?
自分で選んで結婚しておいてそれで『結婚なんかするんじゃなかった』とか泣き言並べてる奴に<努力>を語る資格があるわけねえだろうが。
『自分の思う通りにはいかなかった。でも、結婚したことは後悔してない』
くらい言えるようじゃなきゃな。
ましてや、自分の子供の兄弟姉妹を、知らない間に他所で作ってくるような父親が<当たり親>だとか思うのかよ?
他所の男の子供を、亭主に黙ってこしらえてそれを亭主に知らせないまま養わせようとするような母親が<当たり親>だとか思うのかよ?
そういうのを回避しようという努力、してねえよな? してないからそんなことになったんだろ? そんな奴らがどのツラ下げて<努力>を口にするってんだよ?
ああ?
でもな。今の俺も、子供を家畜や奴隷のように扱う村の連中を変えさせられる力も持ってねえから、そういう親を面と向かって責める資格はねえと思ってる。
それだけの話だよ。
そもそも、<親ガチャ>が現にあるってことを認めなきゃいけないのはあくまで親の方で、親ガチャが現にあるのが認められたとしても、子供の方は、<外れ親の所為>にして泣き言並べてりゃそれで済むわけじゃないってのも現実なんだぜ。
俺が、村の連中に反発しながらも、リーネとトーイを養っていくために村の連中相手に商売をするってのも、同じなんだよ。ムカつく相手だからってそれを言い訳にして商売を放棄してて、リーネやトーイを養うことはできねえんだ。
外れたのは外れたとして受け止めて、その上で自分が何をするのか?ってのが大事なんだ。




