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自分に言い聞かせてる<詭弁>

こうして俺は、リーネやトーイのことを受け止める。二人が俺と同じ人間だってことを認めて、人間として扱う。


子供だから経験も少ないし未熟だし上手くできないことだって多い。力だって弱い。俺と同じことができるわけじゃない。でもそれは、誰だって子供の内はそうだったじゃねえか。成長するにしたがって経験を積むにしたがってできるようになっていけただけだろ。


別に、


『ガキは厳しく躾けて飼い慣らす』


みたいにやらなくても、リーネもトーイも頑張ってくれてるっての。俺がやってるのを真似しようとしてくれてるっての。それだって、二人にとって、


『真似したい』


と思えるようにしてるからだろうしな。


しかも二人は、俺がとやかく言わなくても、写本をしてくれてる。そうするのが楽しいからだろうな。


勉強なんてそれでいいと思ったよ。勉強ができて利口な奴は、そういう奴にしかできないことをすればいい。けど、勉強ができる利口な奴は、万能か? 変に利口でプライドの高い奴が、朝から晩まで工場のライン作業をやってくれるってのかよ? てか、そんな奴らをライン作業に使ってて、役に立てられてるって言えんのかよ? 


勉強は苦手だが真面目で単調な仕事をコツコツできる人間に任せた方がよくねえか?


<適材適所>って言葉もあるじゃねえか。勉強ができて利口な奴はそれぐらい分かるんじゃねえのかよ?


工場のライン作業ってのも、それをやってくれる奴がいるから成立するんだろ。社会ってのはそういうもんだって、利口なら分かんだろ?


できる奴は頑張ればいい。でも、今の俺は鍛冶屋しかできない。正直、勉強ってのを頑張ろうって気にはなれなかった。だから俺は鍛冶屋をやる。その上で、リーネやトーイが代書屋みたいな仕事に就けるんなら就いてくれたらいい。


将来どんな仕事をするかってのが具体的に思い浮かばなくても、勉強が楽しいんならそれを楽しんでくれりゃいい。


マジ、それでいいじゃないか。




そうやって俺達が楽しく暮らしてる間にも、麓の村では子供が生まれては死んでいく。こういうのを何百年も何千年も続けてて、


『こんなのは嫌だ!』


って思う奴が徐々に増えてきて、それで世の中が変わっていったんだろうな。


だけど今はまだ、村の連中は俺の言葉には耳を傾けないだろう。聞く耳を持ってりゃ、ブルーノは死ななかったかもしれない。ブルーノだけじゃない。俺が言ったとおりにブルーノは体調を崩してて、そして死んだ。その事実があるんだから、話を聞く気があるならそういう態度を見せるよな。他の子供を死なせないために。でもそんな気配すら今はまだないんだ。


そしてこれは、俺が村の連中に対して攻撃的にならないようにするために自分に言い聞かせてる<詭弁>だよ。



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