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伝記物より日常系

フィクションってヤツでは、立てたフラグは回収されないとキレられるらしいが、『ふざけんな!』って俺は思うね。お前らの満足度のためにこっちゃ人生の切り売りしてんじゃねえんだよ。お前の期待なんざ知ったことか!


と、実際に言ったら<炎上>しそうなことも考えつつ、村に行く支度をする。リーネとトーイが朝食の用意をしてくれてるいつもの光景を見つつな。


それに幸せを感じつつ、思う。


『俺が目指すべきは<日常系>だ。波乱万丈な人生を描く<伝記物>じゃねえ』


そう思うんだよ。


『リーネやトーイが苦しんでつらい思いしてそれを乗り越えて感動のラストへ!』


なんて、冗談じゃない。『苦しんでつらい思い』なら、もうすでに散々してきた。この上でさらにってか? まあ、トーイは危うく死にかけたりもしたが……


でもそれはそれとして、回避できる危険は回避するし、わざと<試練>なんてものを課すつもりはねえ。そんなことを考える奴こそ、


<カス>


だってんだ。野生の動物が子離れのために子供を追っ払うのは、それまでちゃんと育てた上での話だろうが。しかも、人間は、他の動物が拘らねえようなことに拘って、


『人間は他の動物とは違う』


とかホザくクセに、自分の欲求を叶えたい時だきゃあ、


『本能だから仕方ない』


みたいに甘ったれたことをヌかしやがる。浮気やら不倫やらしたい時、誰かをイジメて憂さ晴らししたい時にはな。


『子供は要らない』とか動物の本能に反することをホザいといて、不倫やイジメは『本能だから』ってか?


笑わせんな!


と、前世の俺に刺さりまくることを思いながら村にやってきた。で、広場に行く前にも納品を済ませ、いよいよ広場にとまってるエリクの屋台が見えて、仕事してるのも見えた。


そこには、<ブルーノの父親>の姿があった。なんでも、郷里に住む親に手紙を送るんだそうだ。それをエリクに代筆してもらってるってことだ。


ブルーノを見殺しにし、自分もたまたま死なずに生き残れただけでロクな扱いうけてねえはずなのに、よくまあそんな気分になれるもんだと感心するよ。


だがこれも、自分が親になったからこそ、自分が親にされたことを子供に対してもやってるからこそ、


『親にされたことを許さねえと自分も責められる』


ってえ心理なんだろうなって感じるね。前世の俺も完全にそれだった。俺が自分の親にされたことを<ゆかり>に対してやってて、だからまあ、『親には感謝してる』ってえ(てい)を取ってたな。


やれやれ、実に卑怯で浅ましいね。自分がやってたこととはいえ。



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