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いや、何かやってから言えよ!

こうして、果たしてどんな絵本が手に入るかは全く分からないもののそれについてはエリクに任せるしかなく、俺はとにかく家に帰った。


ちなみにエリクの屋台は、野宿もできるような仕様になっていて、屋台と一体になった床部分を広げてその上にテントを張れるようになってるんだ。それどころか、屋台の一部を転用して簡単な小屋にさえなる仕様だったりもする。


屋台を牽いてどこへでも行くことのある代書屋ならではだな。


でもまあ今回は、村の空き家に泊まるそうだが。




ともかく、家に帰った俺は、大して使い道もなくたまる一方だった<現金>を引っ張り出してきた。


「トニーさん、お金、使うんですか?」


リーネがそう訊いてきたから、


「ああ。リーネとトーイの勉強用に絵本を取り寄せてもらうことにしたんだ」


応えると、


「え…!」


一瞬、嬉しそうな表情になった後、


「でも、そんな……私達のために……」


申し訳なさそうな表情にもなった。けれど俺はそんな彼女に対して、


「ああ、これは俺は勝手にやってることだ。嫌ならやらなくていいし。でも絵本なら読んでるだけでも楽しいだろうしな」


あの凄惨な内容を楽しめる子供というのも正直どうかとは思うものの、そこも『この世界ではそうだから』と自分に言い聞かせる。


「ありがとうございます」


深々と頭を下げるリーネにも、


「とにかく現物を見てから判断すればいいさ。感謝するのはそれからでも遅くない」


そう言った。


「……?」


トーイはまだいまいち分かってないようだけどな。絵本というものを見たことがないんだろう。


それからいつものように三人で食事をし、風呂に入り、ベッドに横になって寝た。


何気なく部屋の中を見ると、本当に家財道具が揃ってきて、普通に人間が暮らしてる<家>になってきたんだって感じる。


リーネもトーイも、本当に安心した様子で穏やかな寝息を立ててくれてるし、それを聞いて俺もホッとする。


これを知らないまま八十年も過ごした俺の前世は何だったんだろうと改めて思い知らされる。


俺はいったい、何のために生きてたんだろうってな。


ただ、それについては考えるだけ無駄だというのは。今世で生きてきた思えるようになったけどな。そんなもんは、死ぬ時になって自分の人生を振り返って考えることだ。まだ何者でもない、何も成し遂げられてない若いうちに考えたところで答なんか出るわけないだろう。自分が何者になるかなんて行動を起こしてからの話だし、ましてやなんにも成し遂げてもいないうちから『何のために生きる』とか、


『いや、何かやってから言えよ!』


って話だと思うしな。



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