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情報を交換

そんな凄惨な事件についてこともなげに話す俺とエリクを、前世の人間は。


『頭がおかしい』


とか言うだろう。けどな、何度も言うように前世とここじゃ何もかもが違うんだ。社会体制も文明レベルも命の重さもな。だから前世の感覚で論じる意味はない。俺はリーネとトーイへの接し方を前世のそれに則したものにはしてるが、ただの自己満足と変わらないし、この世界に広める意図もない。


その後も、俺はエリクと諸々情報を交換した。俺が話したことの代わりに、


『戦争は、俺が属していた国の勝利で終わったらしい』


『ただし、隣国も一旦は手を引いたものの諦めてはいないそうでいずれまた戦争を起こすだろうとみられている』


『ここのような村は他にもみられ、戦争に関連した死者数は正確には分からない』


といった情報をもらった。


「取り敢えず戦争が終わったんならしばらくは大丈夫か」


戦争とは関係ないところでこの集落で起こったようなことはあったりするだろうが、でもまあ、着のみ着のままで村ごと逃げるような事態は当分はないと思う。


加えて、


「トニー達がいた村も、他の奴らが居ついてるぜ」


とも。さもありなん。ここと同じことだ。むしろ死体が転がってなかっただけ楽だっただろうな。


そうして大まかな情勢が分かったところで、


「エリクなら、絵本くらいは手に入れられるよな?」


他の、俺が考えてもどうしようもないことについてはさておいて、リーネとトーイの今後について考えることにした。そのためには絵本をテキストにして読み書きだ。


「おお、この後で街の方に戻るからな。そん時になら」


ということだったので、


「だったら、銀貨三百枚で用意できる絵本を見繕ってきてくれ」


銀貨三百枚。現金よりも物々交換の方が確実なこの辺りじゃ正確な価値はよく分からないが、聞くところによれば家族四人が半年は生きられる額らしい。絵本を買うには大袈裟な額に思うかもしれないにしても、ここじゃ<本>そのものが貴重で高価だからな。活版印刷が発明されているかどうかは俺は知らない。エリクの知る限りじゃ基本的には<写本>、つまり手書きで複製されたものしか見たことがないそうだ。


<写本>は、この世界では主に教会などで読み書きの練習を兼ねて行われていて、その中には絵本もある。ちなみに俺も、エリクとは別の代書屋が持ってたものを見せてもらったことがあるが、これがまた<子供の落書き>同然の酷いもので笑ってしまったことがあったな。


でもまあ、読み書きの練習ついでに描いた絵なら、なるほどそんなもんだろ。


なお、内容は、<あかずきん>の基になったのかもしれない。って感じの陰惨なものだったのを覚えてる。



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