表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
210/398

ははは! 楽しいな!

焼けて崩れた鍛冶工房らしき家の跡から出てきたという<金床>は、少なく見積もっても五十キロはありそうなそれだったことで家に運び込み備え付けるのも一苦労だったが、これで作業もさらに捗るってもんだ。


「すごいですね、これ」


「……」


リーネとトーイも、興味深そうに金床を見ていた。


「おう。元々は鍛冶屋で使うもんなんだが、うちにあったのは見ての通り岩を削り出して作ったもんだ。正直、あんまり使い勝手はよくなかった。でも今度のは正真正銘、鍛冶屋で使うものだからな。仕事もしやすくなるってもんだぜ」


機嫌よく話す俺に、二人もなんだか嬉しそうだ。


こうして早速、俺は、金床の使い勝手を確かめてみた。しばらくずっと岩の金床で作業してたから最初はちょっと違和感もあったものの、うん、やっぱこっちのがいいな。やりやすい……!


岩のヤツは、モロに槌が当たったら欠けるから、気ぃ遣うんだよ。思いっ切り叩けねえ。でも、鉄の金床は、容赦なくブッ叩ける。びくともしねえ。鍛冶屋以外の奴にはただの重しにしかならねえだろうが、鍛冶屋にとっちゃ命の一部みたいなもんだ。


だから俺も嬉しくなっちまって、そのままナイフを一本、打ち上げちまった。


「ははは! 楽しいな!」


ついそう声が漏れる。


「はい!」


「うん…!」


楽しそうな俺を見て、リーネとトーイも笑顔になってて。




こうしてマジな金床を手に入れた俺は、遂にこれまで内に秘めていた計画を実行に移す決心をした。


『湯沸かし器を作るぞ!』


と言っても、湯沸かし器の詳しい原理を知らない俺にはちゃんとしたものは作れないから、今使ってる<でかい鍋>から浴槽に安全に湯を注げるようにする改造を施すと言った方がいいな。


構造は至極単純だ。鍋に足とハンドルを付けて、ハンドルを持ち上げれば鍋が浴槽の方に傾いて湯が流れ込むってだけのもんだけどな。


イメージ的には、<ネコ車>にセメントとかを入れて運んで流し込む時にハンドルを持ち上げるだろう? あれだ。それなら鍋そのものを掴んで持ち上げる必要もないし、ハンドルの分だけ離れてるから湯を被る心配も減る。そうするとトーイにもやってもらえるようになるはずだ。


そんなわけで早速作り始めるが、さすがにすぐには上手くいかない。しかも、注文の品を作りながらだからな。そっちを優先しなきゃならんし。


でも、ちゃんとした金床が手に入ったおかげで作業が捗る。ここまで二日掛かってた品物が一日でできるようになったのは、大きかったよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ