子育ての醍醐味
今日も、リーネがトーイと一緒に料理をしてくれてるのを見ながら、ふと思う。
『そう言えばリーネだってここで生まれ育ったんだよなあ……』
って。ゆえに彼女も、子供を奴隷や家畜のように扱う大人を見て育ってきたんだから、そういう性根は持ってるんだろうな。
ただ、自分の性根をそのままにするか、それとも自分の性根を否定して別の生き方を選ぶかは、人それぞれなんだと思う。それにリーネの場合は、子供の内にそういう親や親代わりの人間のところから離れて、俺と一緒に暮らし始めたことで、俺の影響も受けてるはずなんだ。
さらに、リーネが大人になって子供を作っても、俺が手伝うさ。子供を奴隷や家畜のように使わなくてもいいようにしてやる。
後、トーイに対する接し方を見てても、そんなに心配は要らないようにも感じる。リーネからしてもトーイは<子供>だ。その子供に対する態度が丁寧なんだよ。料理を教えるにしたって、頭ごなしに怒鳴らねえ。失敗しても叩いたりしねえ。分かるまで何度でも丁寧に教えてくれるんだ。
俺がリーネに対してやってたみたいにな。
俺がやってたことを、リーネはもう真似し始めてくれてるんだ。
これも、<子育ての醍醐味>ってヤツかもな。自分の接し方がしっかりと現れてくる。
子供がムカつくことをしてたら、それが誰の真似なのか、冷静に客観的に考えてみるといいと俺は思うよ。自分が誰かに対して同じことをしてなかったか、自分じゃなければ女房か旦那かはたまた爺婆か、とにかく身近な人間の真似じゃないかどうかを考えてみるといいと思うぜ。
もっとも、
『自分は間違ってない!!』
『自分はいつだって正しい!!』
とか思ってる奴にはできないことだろうけどな。
やっぱりこれも、前世の俺だったよ! はっはあ!!
……情けない……本当に自分が情けない……
だからこそ俺は、
「リーネ、トーイに丁寧に教えてくれてありがとうな」
と素直に感謝する。と同時に、ちゃんとそれができる彼女を尊敬する。誰かを尊敬する姿を見せるのも大事だなって感じる。
三人で食事をする時にも、穏やかな時間にすることを心掛ける。イライラギスギスした食事にしない。そんな時間じゃ、子供が何か思うことがあっても親に相談することもできない気しかしない。
「トーイも、リーネの手伝いしてくれてありがとうな」
しっかりと感謝する。そんな俺に、トーイも、少し照れくさそうに微笑んでくれた。愛想よくしてくれなくていい。俺に媚を売ってくれなくていい。
ただ攻撃的でいないでくれればそれでいいんだ。




