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ブルーノの母親が作るパイは

『自分の子供が死んだのを貶めるような母親の作ったものが食えるか!』


と考える奴も前世には多かっただろう。だがそんなのは、他から同等品が簡単に手に入る社会に住んでるからそう思えるんだ。


ブルーノの母親が作るパイは、本当に絶品なんだ。リーネだって同じものは作れない。悔しいが、そういうものなんだよ。


何十キロも離れたところからでもその日の内に品物が届くような社会なら、他にもいるんだろうけどな。同じ程度のものを作れる人間が。


まあ確かにパイなんか食べなくても死にゃあしないんだけどよ。でもな、リーネとトーイが喜ぶんだよ。そのパイをもらって帰ると。


悔しいよなあ……




なんてことを思ってる間にも季節は巡り、ガチの夏がやってきた。とは言え、木陰でいる限りは別にクーラーも要らない程度なんだよな。


だからヒートアイランド現象ってのがどれだけヤバいか実感するよ。前世じゃクーラーがないと普通に死ぬし。


なのに、今世で体感温度五十度は余裕に超えてきてるであろう作業場で真っ赤に熱した鉄をガンガンやってる俺は、自分でもよく生きてられるなと思う。もちろん、水分補給と栄養補給と睡眠を欠かさず、とにかく体を冷やすことを心掛けてはいる。


一方、リーネとトーイには、炉に火を入れてる間には作業場に入らないようにしてもらってる。そのために、俺が作った部屋も順次手を入れていって、今じゃかなり普通の部屋として使えるようになった。屋根も改めて葺きなおし、雨漏りはほとんどなくなった。


新しい部屋にも新たに手に入れた水瓶を設置、こっちに入ってこなくても生活できるようにしたんだ。そこでリーネとトーイには、毎日、パンを焼いたり食事の用意をしてもらったり、手に入れた布で服を作ってもらったりした。


あと、俺が知る限りの読み書きと算術を勉強してもらってる。麓の村の連中にも、自分の名前すら書けない奴は多い。と言うか、そういう奴が大半だ。だからこそ、読み書きができるってのは大きなアドバンテージになると思う。


読み書きができたら<代書屋>もできるしな。


代書屋ってのは、手紙の代筆とかもそうなんだが、前世じゃ<司法書士>と呼ばれてる仕事に近いと思ってもらうと分かりやすいかもしれない。役所とかで必要な書類を代わって作る仕事なんだよ。


これも、なり手が少ない割に街で暮らすにゃ必ず必要になる仕事だから、食いっぱぐれることがねえ。さすがにこんな僻地の村じゃそこまで需要もないものの、手紙の代筆だけでも重宝されるんだ。



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