わざわざ人里離れたところに住んでる偏屈な鍛冶屋
村の連中だって、あんな短期間で、
『壊滅していた集落を生活できるレベルにまで作り直した』
くらいだからな。そういう意味じゃ普通に能力のある連中なんだよ。
『いざとなりゃ他人を傷付けようが殺そうが、知ったこっちゃない』
って考えも持ってるってだけで。この世界じゃ、あいつらだって間違ってるわけじゃないんだ。今の俺の考えとは噛み合わねえだけでな。
今後数百年の間には、俺の考えが正しいって話になっていくのかもしれない。しかし残念ながら俺がそれを見届けることはないだろう。となればやっぱり、今のこの世界と折り合って生きていくしかねえんだ。
いくら感情の面では納得できなくてもな。
そうやって俺が自分自身に言い聞かせながら村の奴らと折り合ってるうちに、すっかり、
<村の鍛冶屋>
としての立場が確立されていった。まあ、正確には、
<わざわざ人里離れたところに住んでる偏屈な鍛冶屋>
だけどな。それでも、作る品物については手を抜かなかったおかげで、腕の方は信頼もされてる。
その一方で、村では当たり前のように子供が生まれては死んでいった。かつて俺が住んでいた村でも同じだったが、数日ごとに、
『〇〇んとこに子供が生まれた!』
『〇〇んとこの子供が死んだ!』
って話を、村の連中がそれこそただの世間話として交わしてたよ。
それを当たり前のこととして何とも思わないここの連中に対してはムカつきながらも、俺は淡々と仕事だけは確実にこなした。
その中で、村としても他の村との交流ができ始め、それを通じて俺も新たに地金を手に入れることができるようになった。クズ鉄も手に入るものの、正直、それだけじゃ先行き不安だったしな。
で、新しく手に入れた地金の内の一部を、前の家の持ち主と同じくあちこちに隠すようにして保管して、万が一に備える。
あと、村から肉も普通に手に入れられるようになったから、家の周りに仕掛けておいた罠についてはすべて撤去した。もし何かの手違いでまた誰かが怪我をしたら目も当てられないしよ。
革製品も手に入るようになったから、もう自分で皮を鞣して作る必要もなくなった。やっぱり、自分で何もかもを用意しようとするよりも、手慣れた奴が作ったものを物々交換なり金なりで手に入れた方が楽だし質もいい。
社会ってのはそうやって成り立ってるんだってのを実感する。一から百まですべてを自分の力だけで賄ってるわけじゃないし、結局は誰かの力を当てにして生きてるんだ。
特に、ブルーノの母親が作るパイは絶品だ。自分の子が死んだってのに涙一つ見せないどころか、
『この役立たずが』
って目で見てたくせに、パイだけは絶品なんだよ……




