親が守ってくれないなら、それは
ブルーノのような事例については、本来、ブルーノの親が守るべきことのはずだろ? 何のために親がいるんだ。自分で勝手に作っておいて他所様に守らせようとか、ムシが良すぎるだろ。
なのにもし、親が守ってくれないなら、それは、
『<親ガチャ>に外れた』
と思って諦めてくれ。俺が守れるのはリーネとトーイくらいだ。
そう自分に言い聞かせて、注文を受けた品を作る。ブルーノを助けてやれなかった悔しさなんかも叩き付ける形でな。
ああ、そうだよ。いくら自分に言い聞かせてみたって簡単に完全に割り切れるもんじゃねえ。人のよさそうなツラして自分の子供が辛そうにしてるのを平然と笑っていられるあの若い男の顔を思い浮かべて、それに槌を叩き付ける感じで打ち続ける。
くそっ! くそっ! くそっ! 死ね! 死ね! 死ねっ!!
ってな。
無論そんなことも、ただの自己満足。自慰行為に等しいそれに過ぎないのも分かってる。ただ、リーネやトーイの前で、リーネやトーイに向けて憂さ晴らしするようなのは本当にごめんだ。
だが、そのおかげか、妙に仕事が捗ったのは皮肉ではある。
こうして出来上がった商品を持って、納品のために村に向かう。あの若い男が、次男らしい男の子と畑で仕事をしているのを見ると胸がざわつくが、それに拘っても仕方ない。
俺に分かりやすい<チート能力>でもあればと思うものの、俺の<剛運>も、果たして本当にチート能力なのかたまたまここまで運が良かっただけなのかが確かめようもないから、それを当てにすることもできないしな。
今回の分の納品を終えると、各種生活用品やら服やら布地やら金やらが手に入り、さらに新たに注文も入って、いよいよ仕事として軌道に乗ってきた気がする。と同時に、これ以上一度に注文を引き受けると捌ききれなくて破綻するから、調子には乗らない。
この辺りの判断は、さすがに百二十年分の人生経験だと思う。それがなかったら自分の若さを過信して過剰に仕事を引き受けてこなせなくなって破綻する。って結末が容易に予想できるよ。基本的に調子に乗りやすいタイプだからな。俺。
きっと、物語的にはそうやって調子に乗ってピンチに陥るのの方が盛り上がるんだろう。でも俺は、そういう波乱万丈なのはもうコリゴリだ。できれば<日常系>でいきたい。そのために努力してるし考えてるんだ。
リーネやトーイが反抗期になってそれで<親子のドラマ>を期待する奴もいるだろう。けどな、そんなあれこれがあった後に<親子の和解>を経て感動のフィナーレへなんてのも、嫌なんだよ。
そんなことのためにリーネやトーイに嫌な思いをさせたくない。
せっかくそれが回避できる方法が分かってるってのによ。