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母親代わり

雨で他にできることもなかった今日、リーネは、パンを焼き、いつも以上に手の込んだスープを作り、スープを煮込んでるうちに服を繕ったりしてくれてた。トーイも、できることは手伝ってくれる。


野菜を洗ったり、リーネが繕い物をしてる間、スープが煮詰まったりしないように見張っててくれたそうだ。


リーネのためだからそこまでしてくれる。トーイは、リーネのことを信頼してるんだ。たぶん、母親代わりってことだろう。実際、母親みたいに接してるしな。


それが大きくなってきたらどう影響するかは、俺にも分からん。俺としてはリーネの相手にはどこの馬とも知れない奴よりも、俺の下で育ってリーネのことを大切にしてくれるのに育ったトーイと結ばれてほしいと思うんだけどな。血の繋がった姉弟でそれはマズいが、現に血は繋がってないし。


ただ、俺の思うようにトーイが育ってくれるとは限らないのも事実。


でもな。前世のことがあるからこそ、今世では大丈夫だっていう予感はある。前世の俺の失敗をしっかりとわきまえてれば、少なくとも同じにはならないっていうな。


俺自身が、


<俺から見て信頼できない奴>


にならないようにすればいいって分かるんだよ。前世の俺は、俺自身から見てさえ欠片も信頼できない人間だった。どこまでも、


『自分だけが優先されて優遇されるのが当たり前。そういう社会がいい社会』


って思ってたしな。そんな社会は有り得ないことさえ理解できない奴だったんだ。


そんな奴のどこを信頼すればいいんだ? 自分だけが正しくて間違ってるのはいつだって自分以外の奴と思ってるような人間だぞ? そんな奴が信頼されるとか、子供の寝言よりひでえってもんだ。


しかもそういう奴は自分が正しいと思ってるから他人の意見になんざ耳を傾けないし、自分を批判してくる奴はバカだと思ってる。


なあ? 周りにそんな奴いなかったか? そんな奴のこと、信頼したり尊敬できたりしたか? できなかったんならそれが答えだ。そして自分がそうなってしまってないか、自分を客観視できない奴が陥る落とし穴だ。


自分の所為で周囲からの信頼を失ってるのに反省しないから改まることもなく、改まらないから信頼が回復することもない。


なんでその程度のことも分からなかったのか、自分でも本気で情けなくなる。


そんな親を見て育った子供が親と同じようになるのがそんなに不思議か? 親がやってることだからそういうものだと思ってしまうのがそんなに不思議か? 


なら、俺が<他者を敬う姿勢>ってのを実際にやってみせていれば、リーネやトーイが真似てくれるってのが、そんなに有り得ないことか?


自分が嫌な思いをせずにすむやり方を親がやってくれてるってのに、それを真似ないって、当たり前のことなのか?



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