この世界で庶民が食べてるパンは
この世界で庶民が食べてるパンは、まあ要するに、
<スープとかに浸して食べるもの>
っていう認識なので、硬くてボソボソしててもまあいいんだと思う。パンだけでいくつも食おうとするとつらいだけで。
それで考えれば、やっぱり前世の社会の方が料理とかの研究が進んで美味くなってるはずなんだ。ただ、人間ってのは意外と、
『食べ慣れているものを美味いと感じる』
部分はあるみたいで、前世の人間が食ったら『不味い』と感じるかもしれないここの料理でも、中には『こっちの方が美味い』と感じることもあるかもしれねえな。
何より俺は先にも言ったとおり、料理はからっきしだ。肉を焼くくらいはできるが、それ以外はマヨネーズの作り方一つ知らねえ。もっとも、作り方を知ってたところで材料が簡単には手に入らねえからどうしようもないけどよ。
なんてことを思いながら、昨日の残りのスープをリーネが温めてくれて、それに浸してパンを食べた。うん、やっぱりこうやって食べるもんだよな。
それでも、料理のバリエーションが増えたのはありがたい。飽きようがどうしようがそれしか食うもんがねえんだから食うしかないものの、やっぱりずっと同じものが続くってのはつらいしな。
そして軽く食事を終えて、俺は鍛冶の仕事を。リーネとトーイには、俺がもらってきた野菜の仕分けと風呂の湯沸しと庭の草刈りをしてもらった。
刈った草は、物置に保管しておいて乾燥させて、ベッドに敷くために使う。その内、藁束を手に入れられるようになればそっちを使うことになるだろうけどな。やっぱり雑草だとこう、質が一定じゃないから固さとか弾力性とかが安定しないんだよ。藁束がないから贅沢は言ってられなかったが。
あと、麓の村に行った帰りについでに水を汲んでこれるので、そういう意味では風呂を用意しやすくなったというのも、村に行くようになった利点の一つだな。
もちろん、でかい鍋については今も俺が担当してるが、最低三回は沸かさなきゃいけなかったのが二回で済むようになったのは助かってる。でもまあ、また秋を迎えて寒くなってくるとそれだけ沸かさないといけなくなるだろうけどな。
てか、露天風呂状態だからさすがに毎日入るにはつらいか。冬の間は凍えるだろ。竈に火を熾しながらという手もあるかもしれないが。
こうして、たぶん最も需要が多いであろう鋤を作ったところで日が暮れてきて、風呂に入って、リーネが作った猪肉入りのスープとパンで夕食にしたのだった。