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俺の今世の両親のそれとは

『この村はまだできたばっかりでな。鍛冶屋はまだいねえ。半日歩いた隣の村まで行かないと』


若い男のその言葉は、俺にとっては大変な良い報せだった。他に鍛冶屋がいないなら、それこそ独占市場じゃねえか。


もっともそれは、ここに避難していた俺の親父が死んだということも表してるけどな。俺の親父も鍛冶屋だったわけで。


そのことを悟っても、胸も痛まねえ。つくづく俺は、今世の両親のことも嫌ってたんだなと改めて実感する。リーネやトーイのことは愛せてるのにそれだ。根っから他者を愛せないってわけでもないのにな。


つまり、今世の両親も、我が子に嫌われることしかしてなかったということでもあると。


まったくもって虚しい限りだよ。自分の子供にここまで嫌われるとかな。お涙頂戴の親子の物語だと、その辺も物語終盤で和解に向かっていくんだろうが、所詮そんなものは、<感動的な和解>ってえカタルシスを得るためのただの演出でしかないってのを思い知らされる。この世に転がってる<親子の確執>ってのは、そんな<感動ポルノ>みてえには上手くいかないってこった。


だってそうだろう? 自分をただの道具とかペットのように考えてるのが分かり切ってる奴に、本気で感謝とかできるか? 許せるか? 体に生涯消えないような傷が残る暴力を振るった相手を許せるか? 父親じゃない男の子供を孕んでおいてそのまま父親の子供として養わせようって奴を許せるか? それこそ大きな事件を起こして自分の人生を滅茶苦茶にした相手を許せるか?


綺麗事抜きにして言ってみろよ? そんな奴を本当に許して受け入れられんのかをよ。そういうのが自分の親だったら、感謝できんのか? 許せんのか?


『生んでくれてありがとう』


『育ててくれてありがとう』


って言えんのか? 俺にゃ言えねえよ。


……なんてことはただの余談だけどな。


俺が作ったプラウを荷車から出して、


「取り付けが必要か? 取り付けもってなったらまた別に手間賃をいただくことになるが」


って問い掛けたら、


「いや、取り付けは自分でできるからいい。てか、こりゃなかなかいい代物だな。頼りになりそうだ」


若い男は嬉しそうに俺の作ったプラウを手に取った。それから鎌も渡すと、


「おい、野菜、用意できたら持ってきてくれ!」


家の中に向かって若い男が声を掛け、


「はいよ」


背中に赤ん坊を括り付けた若い女が野菜を詰めたカゴを持って出てきた。女房と子供か。


その二人の様子は、俺の今世の両親のそれとは違ってるように見えた。あいつらはもっと、険悪な感じだったんだ。



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