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ああ…未来の姿だな

『はい……ごめんなさい……』


そう言ってくれたトーイだったが、それでも子供ってのは、興味を引かれるものを目の当たりにすると他のことが頭から綺麗にスポーンと消えてしまうこともあるそうだ。だから今後も同じようなことをしでかす可能性は十分にある。


だが俺は、そういうことがあっても頭ごなしに怒鳴らないようにしなくちゃと思う。


『怒鳴らなきゃ反省しないだろう!?』


と言う奴もいるかもしれないが、やっぱり前世の俺ならきっとそう言うだろうが、怒鳴ろうが(すか)そうが、忘れる時には忘れるんだよ。俺と同じ年頃の奴にも、四六時中怒鳴られてるのがいたが、それでも何度でもやらかすのがいたよ。


しかもそいつ、小さい頃は単に頭からすっぽ抜けて忘れちまうだけだったみたいだが、十歳を過ぎたあたりから、明らかにわざと『するな』と言われたことをしてる節があった。怒鳴られ慣れたことでまったく堪えなくなったらしい。


それでいて怒鳴られたらムカつくから、反発してたみたいなんだよ。


そしてそいつを怒鳴ってた父親は、歳で体が思うように動かなくなった自分の父親、つまり俺と同年代だった奴の祖父に対しても、


「もたもたすんじゃねえ!!」


とか怒鳴り散らしてたよ。それを見て俺は、


『ああ…未来の姿だな』


と思った。息子に対して怒鳴り散らしてたのを、歳をとってから逆に怒鳴られるようになるってやつだと実感したな。


まあそれについては、戦争が起こったことで村ごと逃げたし俺は途中ではぐれたからどうなったかは知らないが、麓の村に父親のらしい死体があったし、怒鳴り散らしてイキってた割には呆気なく殺されちまったんだなと思うだけだ。


自分より弱い相手に怒鳴り散らすような奴は、所詮、その程度だってことだろ。


自分より強い相手には、あっさりってな。


そういうのを実際に見てきてるからこそ、俺は身の程をわきまえなきゃと思うんだ。トーイを頭ごなしに怒鳴りつけてて、それで反発されるようになってわざと要らないことをやるようなのになってもらっちゃ。逆に手間が増えるだけだろ。


『心配だからこそ怒鳴る』


ってか? そんなアニメやドラマの中の演出そのまんまな奴らなんてどのくらいいるよ? どうせほとんどは自分の感情任せに喚き散らしてるだけで、それを正当化するためにアニメやドラマの<お涙頂戴シーン>を利用してるだけだろうが。


「今日はまだ様子を見て、それで大丈夫そうだったら明日からまたリーネの仕事を手伝ってくれ」


トーイの頭を撫でながら俺はそう言ったのだった。



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