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頭がひどく混乱していた

こうしてリーネには寝てもらい、俺はトーイの看病を続けた。と言っても、容体が急変しないか様子を見つつ、濡らした布を水に浸してまた頭に乗せてとにかく熱を奪うくらいだ。あと、


「トーイ、スープだ。飲め」


リーネが作ってくれたスープを、敢えて具は入れずにスープだけを匙で掬って口に含ませた。熱がある時は特に脱水症状に気を付けないといけなかったはずだという、不確かではあるものの何となく覚えてた知識を頼りにな。


でも、熱が高くて汗をかいてるなら水分補給は大事だろ。


トーイは、熱に浮かされて意識は朦朧としてるみたいだが、口をわずかに動かして、くちくちと小さく音を立てながら舐めるようにスープを飲んでくれた。


そういう反応があるだけまだ大丈夫だって気がする。これすらできなくなって顔色がおかしなのに変わったら、それこそやばいんだろうな。


途中、何度もウトウトしてしまいながらも、リーネが寝返りしたりトーイが少しうなされたりという気配がある度にハッと目を覚まして、看病を続けた。そして夜が明けると、


「トニーさん、私が代わります。寝てください」


電車内で居眠りをしてる奴のようにぐんにゃりと体が傾いていた俺にリーネが声を掛けてきた。ハッとなって体を起こすと、心配げに俺を見るリーネの姿。


「あ…ああ……そうだな。頼む。でも、もし何か困ったことがあったらぶん殴ってでも叩き起こしてくれ。いいな?」


「はい。分かりました」


リーネが起き上がり、代わりに俺がベッドに横になる。こうして近付くだけでトーイの体が熱いのが分かる。本当に熱が高いんだ。


『前世なら、病院に駆け込めるのにな……』


そんなことを思いつつも、ないものを嘆いてもどうにもならない。トーイの生命力を信じて、リーネと交代で看病を続けるだけだ……


なんて考えてるうちに、俺は眠りに落ちていたのだった。




で、


「……!?」


目が覚めると、今、自分が何をしているのか、なんで寝ていたのか、頭がひどく混乱していた。朝なのか何なのかが把握できない。


そうして数十秒、呆然とした後、ようやく今が夕方で、トーイの看病をリーネと交代してやってたことが頭に沁み込んでくる。


普段と違う状況だったから、上手く現状を認識し直せなかったんだろうな。


だが、そんな自己分析もどうでもいい。


「スープ、食べますか……?」


リーネが俺の顔を覗き込みながら言ってくれた。


「お…おお、ありがとう」


ゆっくり体を起こしたところでようやく完全に頭が働いてきて、


「そうだ、トーイは……!?」


俺の横で寝てたトーイを見る。


と、一目見て分かった。顔が、赤くない。寝息が静かだ……


そっと触れたトーイの額は、汗で少しひんやりとしていたのだった。



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