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ホントすまねえ

「あー…! あーっ……!」


トーイはテーブルの上で体を丸めて泣いていた。無理もない。しかもたった三歳くらいの子供がこんな目に遭ったんだ。もしかしたら熱を出したりするかもしれない。


傷の処置は、あくまで山場を一つ越えただけに過ぎない。ここからしばらく、耐える毎日が続くだろうな。傷口自体は二~三日で塞がるかもしれないが……


今回のことは、俺の失態だ。鳥を捕まえようとして罠のことを失念したトーイも、竈の灰の掃除をしていたリーネのことも責められない。子供ってのは、目先のことに集中してしまって周りが見えなくなることが多いってのを知っていながら目を離した俺が悪いんだ。


俺を責める他人はここにはいないが、だからこそ俺自身が俺を諫めないといけない。トーイやリーネの所為にしてて、大人の責任が果たせるか!


大人が責任を負わないなら大人なんか要らん! 子供だけで生きればいい。


だが俺は、リーネとトーイを放り出すなんてことはできない。だから俺が責任を負うんだ。


「ごめんなさい…私がちゃんと見てなかったから……!」


涙目で謝ってくるリーネに、


「それは違う。子供の安全を確保するのは大人の役目だ。俺はそれを怠った。俺の責任だ。リーネは悪くない」


きっぱりと言う。けれど彼女は、


「でも……私は……」


自分を責めようとするんだ。そんな彼女に俺は続けた。


「言うな。それに、リーネも大人になったら嫌でもこれと同じ責任を負うことになる。自分を責めるのは、大人になってから今の俺と同じ失敗をしてからでいい。俺が失敗したのを見てたのに、同じ失敗をした時にな」


そうだ。今はリーネの責任じゃなくても、彼女が大人になれば責任を負う立場になるんだ。だから俺だけが責任を負ってるんじゃない。リーネもトーイも、いずれは大人になるんだからな。今の俺がリーネとトーイに示すべきは、


<責任を負う大人の姿>


だ。子供に責任を押し付ける大人の姿じゃないんだよ。




こうして三日間、俺とリーネはつきっきりでトーイの看病をすることになった。初日の夜から、やっぱり熱が出た。濡らした布をあてがって熱を奪いつつ、様子を見る。


その中で、リーネが煮沸消毒して干してくれてた布を包帯代わりにして巻き直すが、最初に巻いたヤツは血でへばりついて、外す時にまたトーイが暴れた。それをリーネに押さえ付けてもらって俺が包帯代わりの布を替える。


「すまん。トーイ! 今は耐えてくれ……!」


そう言い聞かせるものの、そんなことで納得できるはずないよな。我慢できるわけないよな。


ホントすまねえ、トーイ……


怪我なんか、させるもんじゃねえな……



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