表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/398

文明病の一種

こうして風呂を沸かして、また三人で入る。連日の風呂に俺もすごく気分がいい。あの<悪夢>もこれで少しは和らぐかな。


リーネは頬をほんのりと桜色に染めてうっとりとした様子で浸かり、リーネの膝に抱かれた形で浸かってるトーイも、気分は良さそうだ。こうやってあたたかい湯に浸かってリラックスするという経験はこれまでほとんどなかっただろう。暑い間は濡らした布で体を拭くか、精々、タライに汲んだ水や川とかで水浴びするのが精一杯な上に、寒い時期はそれこそ体を拭くのさえ三日に一度とかになるからな。


いやはや、<潔癖症>の人間にはそれこそ地獄だろ。この世界は。だから<潔癖症>ってもの自体がいわば<文明病の一種>なのかもなと思ってしまう。その辺は俺は専門家じゃないから何とも言えないが、印象としてはそう感じるんだよ。


とは言え、こうやって風呂に浸かるのも、文明様様だけどな。もしかしたらトーイも割と早く打ち解けてくれるかもしれない。こうやってリーネに抱かれて風呂に入ってリラックスできりゃな。


思いがけず連日風呂に入れたが、この先も同じようには行かないだろう。ただ、雨が降ったおかげでタライに水も溜められたし、明日は水汲みしなくても風呂の水を用意できるかもしれない。そうすりゃ明日も風呂だ。


作るのは大変だったが、作ってみりゃこれだもんな。頑張った甲斐があったぜ!




風呂で身も心もさっぱりして、作ったばかりのサンダルを履いて家に戻って服を着ると、夕食の用意だ。下準備は終わってるから、後は少し煮込んで味を調えるだけだった。


それを、リーネが手際よくこなしてくれる。トーイも、食器の用意を手伝ってくれる。もちろん俺も手伝う。


こうして家族でやるってのが楽しいんだよ。気分がいいんだ。前世では決して味わうことのなかった感覚。こんなことが楽しいなんて、想像もしなかった。


だからこそ悔しい。前世の自分の愚かさが。ただ同時に、その失敗があればこそ今はこうしていられるというのもあるんだろうなと思う。だから前世をただ馬鹿にしてるだけというのも違うのかもしれない。なにしろ他ならぬ自分自身だったわけで。


そして三人で夕食の用意をして、一緒に食べる。


「感謝を」


「感謝を」


「かんしゃを……」


俺とリーネの挨拶に、トーイも合わせてくれた。


「偉いぞ、トーイ」


俺は自然と笑顔になってそう言えた。褒めるだけじゃ駄目なのかもしれないが、ちゃんとやれた時には褒めなきゃおかしいと思ったんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ