ニヤニヤが止まらねえ
そんなこんなでひたすら鉄を打ってたら、昼前に雨がやんできた。しかも、
「ギャウアッ!!」
って悲鳴が聞こえて、バザザッ! バザッ!! って物音もした。すぐにピンときた。罠に獲物が掛かったんだ。
「よっしゃあ! ウサギだ! でかいぞ!」
「やりましたね!」
俺とリーネがテンション高くそう声を上げると、トーイも、俺達と同じようにガッツポーズを決めてた。その姿がまた何とも言えなくてよ。ニヤニヤが止まらねえ。
正直、少々でかくてもウサギ一匹じゃ肉だけで腹一杯とはならねえだろうが、『肉が食える』というのは気分いいもんだ。それだけで幸せを感じられるんだよ。
『肉を食うと精神も安定する』
的なことを聞いたことがある。まあもっとも、食い過ぎると今度は生活習慣病的なリスクも増えるだろうから、なんでも『ほどほど』ってのが大事なんだろうな。
だからこうして、毎日じゃないがたまに肉を食えるってのがちょうどいいのかもしれねえ。
で、リーネがさっそく、下準備を始めてくれた。夕食にまた<ウサギ肉と野草のスープ>を作るためだ。で、その前に、<血のプディング>も作ってくれる。
それで、<昼食>ってわけじゃないが、軽く食事にする。この世界じゃ、必ず食うのは朝食と夕食だけなんだ。昼食は、どちらかと言うと<おやつ>的な感じで食うのかな。
朝食も、起きてすぐに食うわけじゃなくて、一仕事してから食べることも多く、事実上、<朝食と昼食の間>的なものだろうか。
まあその辺は、別に決まり事ってわけでもねえから、好きにすればいいって感じだけどよ。だから俺達も好きにする。
が、ウサギの血のプディングについては、トーイは食べようとしなかった。果実と木の実だけを食べる。
それについても、俺は無理強いはしない。そもそも小さい子供が<血のプディング>を食べようとしないのも別に珍しいことでもないしな。俺の村のそれはとにかく生臭くて血の味しかしなくて、まあ、薬のつもりで食うようなものだったし。
実際、栄養の偏りを補うためのもんだったんだろう。血ってやつは、生き物が生きる上で必要な栄養分を運ぶためのものでもあるわけで。肉食獣が肉以外を食わなくても大丈夫なのは、獲物を生のままで血ごと食ってるからだとも聞いたことがある。
トーイもいずれは食えるようになった方がいいのかもしれないが、この辺りも、子供の舌と大人の舌は違うって言うしな。
加えて、<木の実>には油分も多くどうやらたんぱく質も豊富らしい。木の実の方をしっかり食べてられれば、体が小さい子供はそれでも十分なのかもな。




