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それがトーイの仕事だ

そんなこんなでトーイを諭しつつ、俺は、ぐつぐつと煮え滾るでかい鍋を傾けて、風呂に湯を注ぎ込んでいった。それから風呂の水を汲み上げて鍋に移し、再び沸かし始める。


「沸いたら、俺に教えてくれ。それがトーイの仕事だ。分かったな?」


片膝を地面に着いて視線を合わせて、俺はトーイに丁寧に告げた。すると彼も、


「……」


黙ったままだったとはいえ頷いてくれた。ちゃんと声を出して返事はしてくれなかったものの、母親を亡くしたばかりのトーイにそれを強いるのは酷だと思う。だから今は別にいい。


その一方で、彼にも<仕事>を与える。それが当たり前の社会だから、子供だからと言ってまったく仕事をさせなかったら逆に不安になるかもしれないと思ったんだ。リーネがまさにそれだしな。


『何もせずにただ遊んでいればいい』


と言われても、ここの子供達は<遊び>というものをほとんど知らない。小さい頃から大人に仕事をさせられるからだ。仕事の合間に精々<石当て>のようなことをするだけだろう。


<石当て>というのは、読んで字のごとくただその辺に落ちてる石をひたすらぶつけ合うだけの遊びだ。何が面白いのかさっぱりではあるものの、男女関係なくそんな感じで遊ぶ。あとは、昆虫やトカゲみたいなのを捕まえてバラバラにちぎって遊ぶとかな。


それはたぶん、自分より弱い相手にストレスを転嫁することで何とか精神の安定を保とうとしてるんだろうという気はするし、俺も散々やった。それと同じで小さい子供をイジメることもあったが、これは実は、


<余所の家の労働力を傷付ける行為>


として、下手をすると家同士での抗争にまで発展しかねないヤバイ行為なので、実はそんなにはびこってはいなかった。ただし、そういうところでも変に知恵の回る奴はいて、脅して大人には告げ口させないようにするのもいたけどな。


結局、『他者を敬う』ってことをしない社会だから、子供も精神的に荒んで残虐になっていくということだと実感する。


それでなくても子供の内から動物の解体も手伝わされるし、<死>ってもんがすぐ隣にあり過ぎるんだよ。


だからって、リーネやトーイにそのまんまになってほしいとは思わないんだ。そんなわけであくまでほどほどに仕事をしてもらって、暇を持て余さないようにしてもらいつつ、荒んだ気分にもならないようにしてもらわないといけない。


大変なのは大変だが、別に嫌じゃない。リーネの笑顔を見るのが俺にとっても癒しだからな。そこにトーイも加わってくれたら、それこそありがたいと思う。



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