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最強の設備

風呂に入ってさっぱりしたことで、俺もリーネもトーイも、なんだかホッとした気分になってたと思う。ホントに風呂ってのは気分を変えるには最強の設備だと実感するな。


気軽に使えないのが一番の欠点だが。


でも、二~三日に一度くらいの割合では入りたいなと思う。実際には精々一週間に一回くらいだとしてもそれを目指したいのは正直な気持ちだ。


すると、猛烈な睡魔が襲ってきやがった。三度も水汲みに行ったのがこたえたか。


なので、三人でベッドに横になる。


トーイを挟んで、文字通り<川の字>だ。するとトーイは、リーネの胸に顔をうずめるようにして縋りつく。


ビービー泣いたりはしないものの、やっぱり母親を亡くしたことですごく不安になってるんだろうと感じる。だから俺も、


「甘えたいんなら好きなだけ甘えろ。お前にはその資格がある。権利がある。今はそれでいいんだ……」


改めて諭すように声を掛けながら、頭を撫でてやった。するとすぐに寝息を立て始める。安心してくれたんだろうか。


本当ならもっとビービー泣いたりしてもおかしくないだろうに、俺達が生まれた境遇は、それが許されないものだったんだろうな。


そうだよ。リーネだってまだ親に甘えてたっておかしくない歳のはずなんだ。それがこんなにしっかりしてる。しっかりしなきゃいられなかったってことだ。


それはあくまで、大人が子供を道具として使うのに都合のいい状況でしかないと俺は感じる。そんな中では子供は本気では大人を敬ったりしないだろ。自分を道具として使い潰すつもりの連中をどうして敬える? そしてたまたま潰れなかった子供が大人になって今度は自分が子供を使い潰す側になる。


<呪い>だな。呪われてるよ。そんな社会は。


俺にはそう思える。


「リーネ……俺は、リーネとトーイに幸せになってほしいと思ってる……これは嘘偽りない俺の正直な気持ちだ。だから、幸せじゃないと感じたら無理せずに言ってくれ。何がマズいのか俺も一緒に考える。リーネが幸せじゃないと俺も幸せじゃないんだ……」


トーイを抱き締めながら横になるリーネに、俺は囁くように話し掛けた。そんな俺に、彼女も、


「トニーさん……私は、今、ちゃんと幸せです。確かにちょっと怖いと思うこともあるけど、叔父さん達のところにいた時のことを思うと、ずっと幸せなんです……」


と語り、その上で、


「私、叔父さんと叔母さんが死んでるのを見ても何も悲しくなかった……それどころかホッとしたんです……そんな私に幸せになってほしいって言ってくれるトニーさんには、本当に感謝しています……」


そんなことも言ってくれたんだ……



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