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ここが安心できる場所であることを

リーネが作ってくれたのは、今日も、ウサギの血のプディングと、ウサギの肉と野草のスープだった。毎度同じものだが、美味いので別にいい。レパートリーを増やすには食材が少なすぎる。小麦があればパンも作れるが、今回は見付けられなかったしな。


明日も、様子を窺った上で、大丈夫そうならまた行こう。今度は小麦をはじめとした食糧を探したい。本当は農具を作ってあの集落で小麦辺りと交換してもらうつもりだった。それで冬に備えるはずだったんだ。しかしその集落が壊滅した以上、さらに離れた集落を頼らなくちゃいけなくなるだろう。


いっそ、あの集落に移り住むことも考えたが、余所から火事場泥棒に来る奴らが現れないとも限らないし、さすがに危険だと思う。加えて、逃げ出した奴らが戻ってくる可能性もある。そうなるとまた、衝突することになるかもしれない。


リーネとトーイを抱えたまま、火事場泥棒やらとやり合うのはリスクが高すぎる。リーネやトーイを危険に曝すのも嫌だし、万が一俺がそんなことで死んだらそれこそ二人も野垂れ死ぬかもしれないし。


なので、少なくとも今の間はこの家でひっそりとおとなしくしてるさ。


トーイは、血のプディングは顔を逸らして見ようともしなかったが、ウサギの肉と野草のスープと、果実についてはしっかりと食べた。そして食べると、ベッドの脇に蹲ってしまった。


それについても俺は何も言わなかった。言ったところで何になる。今はとにかくこいつの信頼を勝ち得ることが先だ。そのためには、ここが安心できる場所であることを実感してもらわなきゃいけない。


こういう時も、安全なところから高みの見物をしてるだけの奴らは、好き勝手なことを言うだろう。だが、自分が同じ状況に置かれた時に何ができるのか分かりもしない奴らの言うことなんざ、糞の役にも立たん。それこそ、便利な生活しかしたことのない奴らの<妄想>に貸す耳はねえな。


せめて一年ばかり野宿をして生き延びてみせてから言え。生き延びられればだがな。それを考えれば、ホームレスの言うことの方が役に立つかもしれん。


で、トーイのことはまあいいとして、リーネも、集落に行ってからずっと暗い顔をしてる。あんな惨状を見た後なら当然かもしれないが、彼女の笑顔が見られないことに、俺の胸も重い。


つくづく、リーネの笑顔が俺の救いだったことを感じる。だから、俺はリーネに話しかけたんだ。


「叔父さんと叔母さんのことは、残念だった……」


と。でも、彼女から返ってきた言葉は、意外なものだったんだ。



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