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なんとかしろよこのク●UI!

週をまたいでこんにちは。六話目の更新となります。週明け一発目なので軽いジャブくらいの気持ちでご覧ください。

※ ※ ※


「申し訳ありませんが、その変更には応じられません」

「ナンデ?!」

 おじさんと別れてすぐ。小さな町ガニメデで『衣装屋』を見つけ、いの一番に潜り込んだのだが、受付は話を聞くなりNOを叩きつけてきた。

「スキン変更だろ?! 何も服を新しくしようってんじゃないんだ、タダでやってくれるんじゃないのかよ!?」

 ここはパンゲア。全世界に開放された超巨大クラウド・サーバー・スペースだ。ここに住まう人々は自分自身で『アバター』を作成し、その姿で暮らしている。

 だから、スキン変更で別の姿になるのだって自由自在。性別と顔の不一致だ。やり直しは当然の権利だと詰め寄ったのだけど。

「ですから。十二歳未満のお客様はお父様・お母様の許諾を得ませんと。当方で勝手には」

 けれど、辺境のヘボ店員は首を縦には振らなかった。理屈はわかる。子が親に内緒で顔を変えられたら一大事だ。なる程その言葉は尊重しよう。

「それじゃ困るんだよ。ボクの母様はボクを置いて出てったし、父様はそもそも行方不明。許可出すひとがここにはいないの」

「そうですか。大変心苦しいのですが、今日のところはまた日を改めるということで」

「聞いてた?! ヒトの話!」

 駄目だ。ラチが明かない。こいつと何を話そうが決まり文句を並べられるだけで終わりだ。

「もういい! あんたには頼まない」

「そうですか。またお越しくださいませ」

 やる気のない目にやる気の無い声。本当に申し訳ないと思っているのか? 何から何まで腹立たしい。だからって他に出来ることもなく。やりどころのないイライラを扉にぶつけ、このスキンショップを後にした。


「この顔から解放されるには、母様を捜すしかないわけか」

 足元の水溜まりに自らを映し、唇を尖らせジト目を向ける。腰まで伸びた髪に、色は紺碧(エメラルド・グリーン)青碧(ターコイズ)のグラデーション。女の子にしか見えない長いまつ毛。『本当の』ボクとは全く似ない美しさ。もう何年も、現実世界リアルで鏡を見ることが無くなった。

「本当、何処に行っちゃったんだよ。母様」

 あの飲んだくれはアテに出来ない。ボク自身のチカラで母様まで辿り着かなくちゃいけない。けど、ボクに何が出来る? 魔法らしい魔法は使えず、この身体じゃ満足に剣を振ることさえ出来やしない。

「あ……」不貞腐れて突っ込んだ上着のポケットに、固くて重い感触があった。おじさんが『護身用』と託したあの銃だ。店長を撃ったあとそのままの状態で収まっていたから、引き金を引けばすぐに撃てる。

(弾は、ここにある五発だけ)

 このパンゲアに於いて銃は『禁忌』だ。作っているところも、まして所持している奴もいない。あいつと別れた今、弾を補充する手段はない。詫びを入れてやつにつくか? 否否の否。ボクから悪いと言ってしまったら、きっと二度とアイツに逆らえなくなる。

「あぁもう、余計なことは考えるな」

 目的は決まった。後はもう突き進むだけ。他のことは頭の片隅に放ってはい、終わり!


『けっ、ざまぁないぜ。自分から因縁つけてきたってのによ』

『早くそのポンチョ奪っちまえよ。売れば暫く遊ぶのには困らねえ』

 何だ? 大通りが騒がしい。誰かやらかして目をつけられたのかな。野次馬でごった返す人だかりに行き、背伸びをして状況を見やる。


「こんちくしょう……。前が、前が見えねえ」

 見たかったけど見たくなかった。矛盾してるけどそうとしか言いようがない。

 ついさっきヒトのカネを持ち逃げして別れたあのおじさんが、四・五人のチンピラに囲まれ、何も出来ず丸まっている。

(何やってんだよ、あんたは)

 それまでのしがらみやイライラも全部忘れて、思わずそう突っ込んでしまった。

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