表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/26

第7話:首飾りについての質問

 ルシアは刀で武装していた男の背中にまたがり、聖剣をその首筋に当てていた。おそらく、一瞬で聖剣を光の中から取り出したのだろう。その男は、ルシアの剣が怖くないのか、俺に犬歯をむき出しにして叫んでいる。


「あの奴隷たちは高かったんだぞ! どう責任を取る」


 俺としては奴隷とされた彼女たちを救っただけだが、こいつらにとってはそれで金を稼いでいたのだろう。俺とまともに話し合いができるので切るのであれば、少しくらい手を差し伸べてやってもいいかもしれない。奴隷業は許さんがな。俺がルシアに指示を出す。


「ルシア、悪いがお前はそのまま、その眼帯の男を押さえていろ」


 ルシアはその男に対して、油断を崩さないまま、笑みを浮かべて俺を見上げる。


「はい。ロード様。この男は私が抑えていますので、お好きなようにしてください」


 俺はルシアに、分かったと返事をして、その地面にうつ伏せにされている男の前まで移動して、しゃがんだ。俺の視線がまだ高いが、それでも立っているよりはよいだろう。俺はさっそく、その男の顔を見ながら、問いかける。


「俺の質問に答えたら、お前に対する扱いを考える」

「ふざけんな!」


 男がまた叫ぶので、もしかしたら交渉はできないかと心配になる。俺は、異空間にしまっておいた銀色の首飾りを取り出し、この男の顔の前に出す。男はわけがわからないようで、怪訝な顔をしている。


「この首飾りのことを知っているか?」


 男は短く、知らないとだけ答えたので、俺は続けて質問した。


「では、この首飾が出土する迷宮に心当たりはないか?」


 男はまたも、わからないと言った。俺はやはり期待外れだったかと思い、立ち上がる。


「質問に答えてくれたことは感謝する。俺は魔王ロードだ。改めてお前の名前を聞かせてほしい」


 男は舌打ちをしながら、名乗った。


「俺は、ゲッシュだ。俺をこれからどうするつもりだ?」


 男は必死に顔を上げて俺を見る。俺は考えていることを男に伝えた。


「いや、どうもしない。お前はすぐに解放する予定だ。だが、俺を殺そうとしたら、容赦しない」


 俺は威圧するように魔力を開放し、男に見せつける。男は青ざめた表情になり、絞り出すように言った。


「……わかった」


 俺は戦意を喪失したゲッシュを確認したのち、ルシアとミカエラに声をかけた。


「この迷宮での、すべきことは終わった。俺とルシアは魔王城に戻る。ミカエラ、お前は天界に戻るのだな?」


 ルシアは拘束していた男から手をはなし、俺の隣に来る。ミカエラは俺とルシアを見ながら別れの挨拶をする。


「ええ、私はこの後、天界に戻ります。ロード様、このたびは私をお救い下さりありがとうございます」


 俺に頭を下げた後、ルシアに向き直って、ルシアの手を取る。


「ルシア、助けに来てくれて本当にありがとう。うれしかったわ」


 ルシアは首を横に振る。


「いいえ、あなたは私の親友だもの。助けるのは当然よ」


 するとミカエラはルシアから手を放し、俺たち二人を見る。


「改めて、この度はありがとうございました。天界に戻り次第、国王ウルヴァリオンが得体のしれない商人からどのようにして、首飾りを手に入れたのか、また、その商人らしき者の情報についても集めてみたいと思います。わかり次第、お伝えします。ひとまずはそれでよろしいでしょうか? また、それ以外にもなにか恩返しできることがあるでしょうか?」


 俺は、笑顔で対応する。


「いや、ひとまずはそれで十分だ。だが、また何かあれば、その時に改めて、お前に相談したい。その場合は、どうすれば良い?」


 ミカエラはかわいらしく、自分の耳をトントンと叩いて言う。


「先ほど、お仲間の方にしていたみたいに、魔法通話でも大丈夫です。もしくは、私の頭に直接語りかける、思念通話でも問題ありません」


 俺は、首を縦に振り


「わかった、その時は思念通話でお前に語り掛けるとしよう。何かあれば、お前からも直接、俺やルシアに繋げてきてもいい」


 そういって、俺はミカエラと握手をした。握手を交わしたあと、俺は少し後ろに下がって、転移魔法陣を展開した。ルシアは俺の横に来て、腕を絡めてくる。また、彼女の健康的な柔らかい双丘が俺の腕に当たるが、もう慣れてきた。ミカエラはそれを見て、クスクスと笑っている。ミカエラとルシアは互いに手を振っている。


「では、魔王城に戻るぞ。またな、ミカエラ。テレポート」


 そうして、俺たちは大勇者ブレイズたちによってひどい目にあわされた、大天使ミカエラとその奴隷たちを救助したのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 勢力的に1体1ではなくトライアングル的な構図を用いている点。複雑すぎず単純すぎない設定を選択されていると思う。 難しい表現等はなく誰でもわかりやすい内容で書かれている。 展開が早く文章も特…
[良い点] 此処まで読ませていただきました! 仕事の合間合間ということもあり、スローペースに詠ませていただきましたが、それを差し引いても展開が次々と進んでいく、『早さ』がとても目立つ作品だなと思いま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ