第20話:第2章プロローグ ~星を支える一族~
今回からいよいよ第2章突入です!
世界各地で《インヴェーダ》が出現してから1年以上が経過していた。
世界各国では、混迷する国家が多い中、様々な組織があった。
その中には、どの国家にも所属しない秘密組織もあった。
決して、秘密組織自体は珍しいものではない。秘密組織と言えど、国家と何らかの取引があれば、どうしても国家にその存在を把握されてしまう。完全に国家との取引をしないで、運営できる組織など皆無に等しい。なぜならば、完全にどの国家とも関係を閉ざして自給自足できる組織など長続きしないからだ。
しかし、世の中には例外が存在することも、また珍しくはない。その例外の一つとして、自らを《 星を支える者 》と名乗る組織があった。彼らは狂信的とも言えるほどの信念と情熱を持っていた。
当然組織である以上、彼らにも統治者が存在した。その統治者だけは、とある一族の本家もしくは分家に連なる者たちが代々受け継いでいる。
その統治者を見分けるのは比較的簡単だった。見分けるために、見るべき箇所は2つある。まず1つ目は頭部に生えているツノだ。そして2つ目は背中の翼だ。この2つは本家に近しい者たちほど、より強くその特徴が顕われている。
クゼ王国内に存在する《迷いの霧》の中に、木造建築の神殿のような平屋がある。その屋敷の広間には、数人――全員が色の異なるツノと竜のような翼を生やした者たちが集り、話し合いをしていた。上座に座っているのは20代前半の女性だ。
その女性はややピンクがかった黄金色のツノと立派な翼を備えていた。髪は黒髪で肩に触れるくらいのショートだ。そしてその黄金色のツノと翼は初代統治者の特徴だった。初代こそが最も優れた実力を持っていたと言い伝えられており、長年それと同じ色を持つ血族が生まれることはなかった。しかし、数百年ぶりにその特徴と限りなく近いツノと翼をもつ彼女が生まれた。
当然、魔法の才能は素晴らしく、すぐに親族からも認められることになった。そうして、彼女は20という齢を越えるまで、口頭でしか残されていない先祖からの伝承を必死に覚えながら、己を鍛錬しながら質素に暮らしていた。だが、それはいつまでも続くことはなった。
――そう、《インヴェーダ》の侵攻だ。
彼女は、その時が来たのだと、本能的に悟った。
その彼女を中心にして、《インヴェーダ》についての会合が開かれていた。この場に集まっている者たちの平均年齢は400歳を超えている。無論それを大幅に引き下げているのは、紅一点として上座にいる彼女だ。正座を崩さないまま、彼女が目の前にいるエメラルドグリーンの角と翼が特徴的な白い髭を生やした男性に声をかけた。
「それでは、異界の化け物たちによってアプラス王国に拠点を置いていたシグレの一族も壊滅したということですか?」
「はい、左様でございます。リナ様」
その報告を聞いたリナが目を閉じる。そして両手を合わせ、黙とうを捧げる。黙とうをささげた後、悲しみの声を纏わせ、万感の念を込めて、口を開いた。
「また、仲間たちが逝ってしまいましたね」
他の者たちもそれに同意するように頷いたり、「そうですな」と短く言う者もいた。改めて、場の空気が落ち着くのを待って、リナが落ち着きながらもしっかりとした声で告げた。
「ですが、彼らの行いを無駄にすることはできません。彼らはこの星のために使命を全うしているのです。ですから、わたくしたちもこの身を賭して、この星のために死力を尽くさねばなりません」
彼女はそこで言葉を区切って、改めて全員を見渡しながら言った。
「そうすることこそが、我らが先祖から受け継いできた古からの契約なのですから。この星を支える者としての責務です。ですから、今後も異界からの侵略者の手によって、わたくしを含め全員が命を落とすことになるやもしれません」
今度は、サファイアの色のツノと翼をもった男性が厳かに答えた。
「覚悟はとうの昔にしてあります。それこそが我ら一族の存在理由ゆえ」
リナはその言葉聞き、丁寧に頷く。そして言葉をさらに続けた。
「永いこと口伝されてきましたが、あのお方さえお目覚めになれば、我らはこの星を守ることも叶うかもしれません。今こそ我らの存在意義を示す時です。改めて、残りの場所の分家の者たちにもこの内容はわたくしから直々にお伝えします。それでは、此度の会合はこれにて終了とします」
そうして、各々が広間から去っていき、リナとその世話役の者のみが残された。
彼女は川のせせらぎを聞きながら、現在の人類側の劣勢・そして今後の苦境を想像し、唇をきつく結んでいた。
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