野菜大戦争
20XX年
平和な地球に向けて何隻かの宇宙船が進んでいた。
「( *)トゥメー…」
その宇宙船の戦闘の船。ひと際大きい旗艦のコックピットに座るトマト指揮官へと一人のトマト兵が書類を渡していた。
その書類を受け取り、目を通した指揮官は立ち上がろ、腕を振り上げる。
「ヽ(* )ゝトゥメー!」
「「「ヽ(* )ゝトゥメー!」」」
トマト指揮官の号令の下、今トマト軍の艦隊による地球侵略が開始された。
全人類トマト化計画
地球から遠くはなれた場所にあるトマト星。ある日そのトマト星に隕石が降り注いだ。
近くの星が寿命を迎え、それによって崩壊した破片がトマト星へと飛来したのが原因だ。
大量の隕石によって大きなダメージを負ったトマト星が復興するまで、かなりの時間を有するということで、その間の資源や食料を得るため、資源が豊富である地球に目を付けたのだ。
しかし地球は人類が発展している星であるのと同時に、他の惑星の者も狙っている星でもあった。
そのことを踏まえ、トマト星の首脳陣は地球人を全員トマトへと変え、自らの支配下へと置くことを考えたのだ。
そのために開発されたのがトマト軍が乗っている船に搭載されているレーザー。当たった者をトマトへと変えてしまうレーザーを開発し、地球侵略へと踏み込んだのだ。
艦隊が動き出してからしばらく、ブリッジの窓からも地球が確認できるレベルまで接近することができた。
「( *)トゥメー…」
トマト星は赤い星だ。母星であるトマト星の赤さも綺麗ではあったが、地球の青さもまた違った綺麗さがあり、それに魅了されていた。
少しの間地球の美しさを眺めてから指揮官が立ち上がり、兵士達へと命令を下した。
「ヽ(* )ゝトゥメー!」
「「「ヽ(* )ゝトゥメー!」」」
トマト軍による全人類トマト化計画が開始された。
トマト軍による地球侵略が開始された。まだ宇宙に対する技術が発展途上の地球では宇宙船などに対抗する手段は持ち合わせていなかった。
戦闘機やミサイルなど、様々な兵器を使いトマト軍へと対抗しようとするが、それらはすべてトマトへと変えられてしまい、争いの様相はまさに一方的であった。
このままの勢いが続けば、地球を制圧するのに三日もあれば十分だろう。
「( *)トゥメー…トゥメ!」
順調に侵略を続けているトマト艦隊へと、突如赤いレーダーが放たれた。そのレーザーは船が展開していたバリアによってかき消されたが、それは今まで地球から放たれていた攻撃とは全く違う物であった。
「( *)トゥメ!」
即座に新たな敵の出現を考慮し、周囲の索敵を指示し、それと同時にレーザーが放たれてきた方向へとこちらもレーザーを放つ。
レーダーによる索敵の結果、レーザーが飛んできた方向に複数の艦影が確認された。
即座にその艦影を望遠カメラで捉えると、そこに映っていたのはトマト星と友好条約を結んでいた唐辛子星の宇宙船があった。
「( *)トゥメ!」
同盟国である唐辛子星の軍がなぜ我々を攻撃してきたのか。混乱しているうちに唐辛子軍からメッセージが届いた。
内容は簡潔な物であり、『地球は我らも狙っていた。この機に乗じて我等の星にさせてもらう』とのことだった。
トマト星と同盟国である唐辛子星も地球侵略を狙っていた。そしてトマト星が侵略へと乗り出したことで、自らも動き出したのだ。
唐辛子星の首脳陣の中にも、トマト星の現状からあくまで協力体制を引くべきではないかという意見もあったのだが、地球は一つだ。侵略した際に、協力体制を取ってしまうと、地球の所有権すらも二つに分かれてしまう。
それ故にトマト星よりも先に占領することで、地球の資源を独り占めし、それをトマト星へと輸出する。という結論へと至ったようだ。
唐辛子軍の旗艦『タバスコ号』そこから放たれたタバスコレーザーが地球へと降り注ぎ、直撃した地球人はすさまじい痛みに苛まれていた。
「( *)トゥメ!」
このままでは唐辛子軍に先を越されてしまう。そう考えた指揮官がまず先に唐辛子軍を排除することにした。
トマト軍からの攻撃を受け、唐辛子軍もトマト軍へと攻撃を開始した。
トマト軍と唐辛子軍。二つの軍が空で争いあい、赤いレーザーが飛び交う。
一進一退の攻防が続き、二つの軍が疲弊し始めた時、突如として別方向から白いレーザーが二つの軍へと放たれた。
レーザーが飛んできた方向を索敵すると、そこにはトマト星、唐辛子星、その両方を侵略しようとしている大根星、その軍が展開されていた。
「( *)トゥメ…!」
トマト星、唐辛子星双方が地球侵略を開始したという情報を得た大根星は、これに乗じて地球もろとも両星を自らの支配下にしようともくろんだのだ。
漁夫の利を得ようと、大根軍を率いる旗艦『おろし号』から両軍へと攻撃が開始された。
トマト軍は即座に大根軍へと戦闘開始し、唐辛子軍もトマト軍への攻撃を中止し、大根軍へと攻撃し始めた。
しかし、先ほどまで戦いあうことで疲弊していた両軍は完全な状態である大根軍に徐々に押され始めてしまう。
「( *)トゥメ…!」
このままではやられてしまう。何か策はないかと思案していると突如として今まで静かであった地上の方に変化が生じた。
地上の方から何か強力な光が放たれると共に、突如として巨大な人が姿を現したのだ。
その姿は麦わら帽子にツナギ、その手には鎌を持っている農家のおじさんだった。
「( *)トゥメ!?」
唐突な農家のおじさんの登場により、驚いた三軍は瞬く間に鎌によって収穫されていった。
全てを収穫し終えたおじさんは光と共にその姿を消し、全ての軍が消えた地球はまた平和な日常を取り戻すことができたのであった。