夢をください、悪魔さま!
二日目はそんな日だった。一日で二人分の命を無碍にしてしまうなんて、久々にひどいことをした。
今日は懺悔がしたいなぁ。とかいうと悪魔らしくないと怒られてしまうんだけれど。
二人はその家に帰り、ふかふかのベッドでまた一緒に眠った。
昨日は抱きしめあっていたはずの二人だけれど、アルフは彼女に背を向けている。代わりに彼女はアルフのその背中にしっかりと抱き着いて寝息を立てていた。
僕はその様子を見て、これでは血をもらうタイミングがまたないなあと内心で溜息を吐く。まだ眠っていないらしいアルフがぼんやりと壁を見つめているのを見て、僕は透明になる魔法を解いた。
「どうかな、幸せ?」
僕がそう質問すると、アルフは僕にちらっと視線を遣ってからまた壁に視線を戻した。突然僕が現れたといえど、あまり驚いた様子ではない。
「ああ、もちろん……」
「それにしては元気が無いね」
彼は溜息とともに眉を下げた。
「そりゃあ、人が死ぬのなんて一日に二回も見るもんじゃねえよ……挙句にその人たちが俺に殺されたなんて、なんつーか……重すぎる」
まあたしかにショッキングだった。でも、それでも彼は幸せだと答えている。嫌だと言うんならいくらでも状況は変えてあげられるのに。
「あと一日だよ。僕は君の幸せのためにここにいるんだ、望んでくれさえすれば叶えてあげられる。あくまで僕は、君に幸せになってほしいんだから」
彼は僕の言葉を聞いてからそっと寝返りを打ってマーガレットの寝顔に向き直った。
「彼女の幸せが俺の幸せなんだよ」
そう言いながら、アルフは彼女の艷やかな髪を撫でた。
「だから、そのためならどんな苦しみも不幸も幸せだ」
「……そっか」
僕は微笑んだ。
でも、僕がこうして可哀想な人を助けてあげるのはそんな救いを与えてあげるためではない。むしろ、可哀想な子に感じる切ない切ない愛おしさを向けて、笑顔にしてあげたいだけ、というか……。
やっぱり、何かが物足りない。可哀想な子を助けてあげたいという気持ちはしっかり実践できてるはずなんだけど。