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巧血の乙女は宇宙をも救う  ~現世に転生し少女、血でしたためる漢字にて宇宙人を殲滅するんです~  作者: 功野 涼し
潜る!潜る!

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混乱に乗じる者

 オフィス街から少し離れた病院の電気が突然落ちる。だがすぐに一部の電力だけが復旧する。

 緊急時の停電に備え設置されている予備電源の作動である。生命維持、インフラ、PCのデーターの方を優先するため廊下には非常灯が点灯し最低限の光が辺りを照らす。


 日も沈みかけ薄暗くなった病院内の生命維持装置やPCにノイズが走る。


「会沢は203号室の様子を見てこい急げ! 佐藤と藤村はこのフロアの部屋を東西に別れ全部屋の様子を見て問題ないか、あればなにが必要か記録してこい! 電気があっても機械が動かないんだ俺らでやるしかないんだからな!」


 一人の男性医師が若い医師や看護師やに指示を出して薄暗くなったフロア内に皆が散っていく。


「どうなってるんだこれは。停電なら持ちこたえれるが電子機器の不具合まで。うちはまだ軽い方だから対処しようもあるが集中治療室の方はどうなってることやら」


 この状況を怨めしそうにぼやく医師がカルテを整理して優先すべき患者のリストを作ってくれと指示したベテラン看護師の方を見ると手を止め椅子に座って一点を見つめている。机の上にはカルテが散乱している。


「吉田さんどうかしたんです? カルテの整理は?」


 この忙しい中何をしているのだと若干呆れたような口調で言う医師の方は見ずに吉田は震える手を上げ指を差す。


「どうしたんです?」


 医師が吉田の指の先を見ると暗がりの中をゆっくり向かってくる何かの影が揺らめいて見える。医師の角度からは少し見辛く吉田の真後ろに移動する。

 廊下をゆっくり歩いてくる2メートル位の背で異常に横幅が広い。茶色くヌメっと光沢のある体に長い触角を揺らしている。


「なんだあれは……」


 彼らはその者がウージャスと呼ばれていることを知らない。

 ウージャスは複眼に2人の姿を捉えると重い足音を立て走り向かってくる。その状況に動くことも声を出すことも出来ない2人。


 意味の分からない状況に頭がついてこない2人の前に迫るウージャスの上に突然何かが落ちてくるとぐるんっとその場で回転しながら宙を浮きドスッと鈍い音が床に響く。


 医師たちが床を恐る恐る覗くと一人の少女がウージャスの頭を足で挟み首がネジ切れた状態で床に叩きつけ足をウサギのぬいぐるみが握り同じく叩きつけている。


 少女が挟んでいた足を離し床を蹴り飛ぶと右足を高く上げウージャスの体を踏みつける。


兎脚(トゥジャオ)


 一瞬ウージャスの体が跳ね青白い光が内部から漏れると完全に動かなくなる。少女はウサギのぬいぐるみを掴むと医師たちを見て大きく礼をして走り去る。

 そんな姿を見ているだけの2人は未だになにが起きたのか理解はしていない。



 * * *



 白雪を抱えた思月は病院の廊下を走る。


「怪我を治す暇もないのです」


【まあまあ、白雪が寝かしつけたから傷の治りも早いはずよん】


「……!? そんなわけないのです! 一瞬騙されそうになったのです」


 思月が肩を押さえるが直ぐにハッとした顔で白雪を睨む。そんな思月に口を押さえクスクス笑う白雪。


「こいつらなんなのです? 蟑螂(ジャンラン)の大きいやつなのです。気持ち悪いのです」


【ああ、ゴッキーね。こいつらも宇宙人なんだろうね】


「ええ、多分そうなのです。それにちょっと離れたところに魔力を感じるのです。変わった波長は恐らく巧血、一つは知らない、そしてこの凄まじく大きく暴力的な波長……少し柔らかくなっているのですがイリーナで間違いないのです。まさか彼女も転生しているとは驚きなのです。

 恐らく宇宙人とやらと戦闘しているのだと思うのです」


 暗闇で金色の瞳を輝かせる思月は少し懐かしそうな表情を見せるが直ぐにブレーキをかけると白雪を廊下の丁字路に投げる。

 投げられた白雪はスライディングしそのまま右肘を立て頭を乗せ横になるとフリーな左手をヒラヒラさせる。


【はぁ~い、可愛いウサギちゃんはここにいるわよん♪】


 目の前に突然現れた白い物体が手を振るその姿に固まるウージャス。

 その背後に暗闇から現れる思月が両膝を蹴り膝を折ると頭を掴みそこを軸にして跳んで回りウージャスの正面にくると膝を頭に立て地面へと後頭部から落とす。落として直ぐに前宙すると脚を高く上げ振り下ろし踏みつける。


『兎脚』


 青白い光がウージャスの傷口から漏れ動かなくなる。


「一体何体いるのですかこいつらは」


【ねえねえ、さっきの話だけどスーが魔力使ったってことはあっちもスーの存在に気付いてるんじゃない?】


 白雪が横に寝たまま思月に訪ねる。その姿に思月は少し呆れた顔をしながら答える。


「多分気付いていない、いや気付かれていないのです。スーの魔力は敵の内側から弾けるものなのであまり大きくないので気付かれないはずです」


【へえそんなものなんだ。おっ? ねえスーあれ見て】


 立ち上がった白雪が窓の外を指差すので思月が窓から下を覗くと道路を走っていたであろう車が何かに行く手を阻まれ立ち往生しているのが見える。

 薄暗くなった道路で車のライトに照らされる3匹のウージャスの姿を確認した思月は白雪を抱えると窓枠に足をかける。


【ええ飛び降りるの!? ここ3階じゃなかったっけ?】


「飛び降りた方が早いのです。行くですよ」


 そう言って窓から飛び降りる思月たちは襲われる車の元へ急ぐ。

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