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巧血の乙女は宇宙をも救う  ~現世に転生し少女、血でしたためる漢字にて宇宙人を殲滅するんです~  作者: 功野 涼し
潜る!潜る!

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吉日シュナイダー

 口の中に残る味を堪能しながらウキウキで走るシュナイダーは地下を掘り進む化け物を追っていく。そして考えるのは化け物の名前。


「あいつはモグラだな。ふむ、モグラか……漢字で土竜。竜はちとカッコいいな『大土鼠(おおつちねずみ)』とでも呼んでおくか」


 大土鼠は道路を盛り上げオフィス街を破壊しながら進む。


「更に下に潜らないということはオレとやりあう気があるということ。良い心がけだ! 燃やし尽くしてやる」


 そんなシュナイダーの台詞に応えるように激しく揺れた地面が破裂し舗装のアスファルトを吹き飛ばしながら現れた瞬間から大土鼠は顔を開くと長い舌を繰り出してくる。先ほどと違うのは舌が2本あること。


 空気を切り裂きながらしなる舌を空中を蹴りながら避けるシュナイダーは尻尾に風を集めると鋭く這わせ、宙を連続で前転して回転ノコギリのようになり2本の舌を切断しながら着地する。

 シュナイダーに切られた舌は血を吹き出しながら戻っていく。


 着地したシュナイダーが間髪いれず地を蹴り風の弾丸となり、大土鼠の元へ戻っていく舌を追い越して風の斬撃を一閃走らせると捲れた口の一部が切断され地面へと落ちていく。


「このままいくぞ!! 『風脚炎舞(かざあしえんまい)』!!」


 大土鼠の後ろで空中をけり反転すると全身を炎に包み縦横無尽に炎の線を引いていく。赤い線が入る度にバラバラになっていく大土鼠。

 最後に大土鼠の頭の真上に炎が留まり激しく燃え盛ると真下に炎が真っ直ぐ落ちる。

 正面からみて真っ二つになる大土鼠は炎に包まれる。


 切れ目を更に進め地面に潜っていた腹部あたりまで大きく割れると無数の歯が生え大きな口を形成する。


「なんだコイツ。オレの切り口を逆に利用して体を作り変えたのか!?」


 驚くシュナイダーの耳に響く旋律。それと共に周囲に五線譜の泡が広がり始める。そして弾ける泡の旋律に合わせ飛んで来る鉄の棒が次々と大土鼠に突き刺さっていく。

 近くの建設中の現場の資材をぶん投げ鉄の棒の嵐を起こしているお嬢様をシュナイダーは見守ることに決めお座りをする。


 やがて鉄の棒が刺さり針ネズミのようになった大土鼠に向かってくる少女は銀髪をたなびかせ肩に鉄骨を担いで突っ込んでくる。


「しまいだぁぁ!! 砕けちれや!!」


 そう言ってフルスイングされる鉄骨は鉄の棒が突き刺さって体に切れ目が入っていたところを更に引き裂き、大きな口になった部分の一部を引きちぎる。


 見た目の華麗な感じと動く度に花のような(かぐわ)しい香りを漂わせる優雅さに反して豪快なその様子を尻尾を縮ませお座りで見ているシュナイダー。


(見た目、匂い、味、完璧なんだがなぁ)


 そんなことを思うシュナイダーの前で鉄骨を尚も振り大土鼠をぼこぼこにしていくエーヴァ。半分になった大きな口の中に鉄骨を突っ込むとフルートを唇の当てトドメに入ったときだった。

 大土鼠の上半身と下半身を分けるように輪切に亀裂が入りズルリとずれて鈍い音を響かせ地面に転がる。その間に続けられるエーヴァの演奏でずれ落ちた上半身は内部から弾け完全に動かなくなってしまう。


 だがそれより先に地響きを上げ何かが地下を移動し始めたのを2人は感じとる。


「下半分だけ逃げたのか!? ちっ追うぞイヌコロ!」


「あ、いやオレ、シュナイダー。興奮するとイヌコロって呼ぶのちょっとやめていただけ──」


 エーヴァが抗議するシュナイダーに飛び乗って座る。


「お前が走った方が速い、行くぞイヌコロ!」


「イヌコロ行きます!」


 シュナイダーはエーヴァを乗せいつもより軽やかに走る。


「思ったよりめんどくさいなあいつ。それにもう1匹敵がいる。詩はそっちにいっているからこっちもとっととやるぞ」


「イエス!」


 エーヴァを乗せ駆けるシュナイダーが音と振動を頼りに進む。


「さっきより移動スピードが上がっています。少しスピードを上げるのでしっかり掴まっていてください」


「ああ頼む」


 エーヴァの両足にぎゅっと挟まれる感触と首を掴む手の温もりを感じながら鼻息荒く走るシュナイダーは思う。


(今日はなんていい日なんだ)


「おい、止まれ」


 頭をバシッと叩かれ我に反るシュナイダーはエーヴァが止めた理由を耳を立てて気が付く。


「音が増えている?」


「数は2匹、走る音が途中から割れたことから察するに仲間が来たってことだとじゃないな多分」


「というと?」


「分裂だろうよ。一匹辺りの音が小さくなった。さっきの上半身を捨てて逃げたことを考えるにある程度の大きさまで分裂するんじゃねえのか? これの意味することは逃がさず一気に全滅させる必要があるってことだな」


 エーヴァがビルの上を見て周囲を見渡すとシュナイダーの背中に寄りかかり耳元で囁く。


「お、お嬢様そんな背中に色々と当たってますわん、なんと大胆なっ! それにわたくしめ耳が弱いのでございます。息が掛かってもう」


「なに言ってんだお前? いいから聞け! ここはやつらを倒す為にはおあつらえ向きの場所だ。退路を防ぎ一気に殲滅させるその為にイヌコロの発火の速さが役立つ──」


 顔を赤くするシュナイダーへの耳打ちが終わるとエーヴァはシュナイダーの背中から降りる。


「手筈通りに行けよ。音を拾う範囲はお前の方が広いが精度はあたしのが上だ。お互い指示を出しあってポイントを決めてくぞ!」


 エーヴァが降りて少し背中が寂しいシュナイダーは今日と言う日に感謝しながら右前足で敬礼をする。


 それはそれは綺麗な敬礼を。

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