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巧血の乙女は宇宙をも救う  ~現世に転生し少女、血でしたためる漢字にて宇宙人を殲滅するんです~  作者: 功野 涼し
奏でる旋律は繊細に激しく

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戦うお嬢様は狂暴に

 学校を抜け出し、魔力の方向へ向かって走って行く私たち。やがて商店街に着くとあちこち派手に物が散乱し、ガラスが割れている店舗もなんかもある。

 商店街のお店の人達だろうか、呆然として壊れた店を見ている人や、片付けをしている人がいる。


 商店街を突っ切ろうとするエーヴァちゃんを押さえ、裏通りに誘導し、人目につかないようにして駆けて行く。


 この商店街は山にある神社への参道を挟むように建てられており、魔力は神社の方から発せられている。

 恐らくはシュナイダーが宇宙人と交戦するのに、商店街から人気のない神社の方へ追いやったというところか。

 だとすれば、なかなかやるではないか、あのわんちゃん。


 心の中で誉めながら進むと、欠けた階段や折れた手すり、穴が空いた地面に絵馬をかける絵馬掛所が吹き飛んでたりするが、見なかったことにして神社の裏にある山の方へ入っていく。


 熱風が木々の間を駆け、赤い炎が放つ閃光が走ると、肉を突き破る音が響く。そのまま上昇した炎は上空で渦を巻き、火の粉を雨のように降らせると、その回転速度を上げ地上へと落下する。

 落下と同時に炎を含んだ熱風が一瞬周囲を焼き、小さな草木はその命を散らしてしまう。


 熱風の中心にいるシュナイダーが私に気付くとウインクをしてくる。


 どこの世にウインクしてくる犬がいるんだ。


 げんなりする私の前に、エーヴァちゃんがズイッと立つ。その姿を見て反応するのはシュナイダー。


「誰ですそのお綺麗なお嬢さんは!? 私シュナイダーともうぅもがあっ! きゃーん」


 エーヴァちゃんは、飛び込んでくるシュナイダーの顔面をむんずと掴むと、放り投げる。


「イヌッコロさんはどいててくださる。どうせもう一匹いるのですよね?」


「え、ええまあ」


 顔面を擦りながら応えるシュナイダー。


「ここはあたしがやる。お前との勝負の前にもう少しカンを取り戻したい。拳に乗せられる力も大分上がったし、色々試したいからな」


「え!?」

「なぬっ!?」


 優雅な雰囲気を脱ぎ捨て、攻撃的な雰囲気を身に纏い、右の鋭く尖った犬歯を見せニタリと笑うエーヴァちゃん。

いきなり変わった雰囲気に押され私とシュナイダーが後退る。

 そんな私たちを背にして、挑発するように手招きするエーヴァちゃんに最早優雅さはない。


「こいよ! 砕いてやる!」


 そんな声に応えてくれたのかは知らないけどヤツは現れる。目の回りの黒い縁取りを真横に引き、太い尾にリング状の縞模様。


「ねえ、あれ狸?」


「うむぅ、オレはあまり詳しくないが、違う気がするぞ」


 こそこそ話す私たちと、宇宙人を前にテンションが高くなるエーヴァちゃん、両者の間の温度には大分開きがある。


イノート(アライグマ)か? まあ何でもいい、いくぜ!!」


 なんか、「いもうーと」だかなんだか言っていたけど、取り敢えず名前はエーヴァちゃんの言葉を借りて、タヌートと呼んでおこう。


 このタヌートも例に漏れず、見た目が大きい。体長は2メートルぐらいだが、なによりも特徴的なのがリング状の縞の太い尻尾。尻尾だけで1メートルはある、動きにくそうである。

 普通ならこの化け物に対し可愛らしいエーヴァちゃんを心配して止めるところだが、ガンガン上がってくる彼女の魔力量を感じて私たちは見学を決める。

 ぴょんぴょん跳ねて、体ほぐしてる姿を見たらなんか安心感を感じてしまう。


 腕を伸ばし準備運動をするエーヴァちゃんは、爪を出して襲いかかるタヌートの攻撃を身を僅かに捻りかわすと、その細い腕から放たれる拳はタヌートの横っ面に食い込ませる。

バキッ! と骨の折れる音が周囲に響き、顔の歪んだタヌートは真横に吹き飛ばされ、そのまま大きな木の幹に激突する。


 木がぶつかった衝撃で激しく揺さぶられ、上空から大量の葉っぱが舞い落ちる。

その中をエーヴァちゃんが、力強く突き進み葉っぱを再び上空に舞い上げ、顎が歪んだタヌートの頭を掴むと、一旦宙に持ち上げそのまま地面に激しく頭を叩きつける。

 地面に響く衝撃と、三度舞う葉っぱの影に眼光が鋭く輝くエーヴァちゃんが見える。


 ベキッッ!!


 つぶれた頭から響く鈍い音と飛び散る鮮血。私とシュナイダーは唖然として見ているだけである。

 見た目と戦い方のギャップが凄すぎて、なんと言っていいのか分からない。

なんなのだあの子は? 私はあの子と戦わなければいけないのか? 一旦約束したけど凄くやだ。今凄く後悔している。


「本当になんなんだ、お前らは? 頭潰したのに心音が弱まらない。それどころか騒がしくなるって、おかしいんじゃねえか?」


 エーヴァが違和感を感じ大きく後ろに下がる。


あ、ここから「ちゃん」付けやめます。なんかもうそんな感じじゃないんで。


 タヌートの尻尾が大きく膨らむと、真ん中からバックリと横に開く。糸を引きながら開く尻尾の中には、無数の歯が並ぶ。その尻尾が大きく口を開き背中を反るようにして攻撃をしてくる。

 だが、いまいち体勢に無理があるのか、中途半端な攻撃になるそれは、タヌート自身のバランスを崩す結果になる。


 ゴロンと転がるタヌートは、エーヴァに攻撃されまいとすぐに横に転がり、距離を取ると背中を地面につける。

 バキバキと音を上げながら腹にある足を無理矢理伸ばして、4本足の関節を反対に曲げ、長くなった足を地面につけ尻尾に大きな目が生えて正面を向く。


 大きな尻尾が顔となり、背中を腹に手足を伸ばし、4足歩行の虫みたいな姿のタヌートは、尻尾に生えた目をギョロギョロさせながらエーヴァを見る。


「なんだぁ? 気持ち悪いやつだな。あたしはこの後予定があるんだからすぐ終わらせるぞ。

 本当は本番まで取っておきたかったが出し惜しみはらしくないんでね」


 エーヴァがケースから取り出す楽器、フルートを手にすると、スカートを摘まみ可愛らしい微笑みを浮かべ挨拶する。


「地獄へ落として差し上げますわ。生涯最後の音楽を御堪能くださいな」


 ちょこんと可愛らしくお辞儀するけど、怖いよ~。

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