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巧血の乙女は宇宙をも救う  ~現世に転生し少女、血でしたためる漢字にて宇宙人を殲滅するんです~  作者: 功野 涼し
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突入!!

 シュナイダーの鼻を頼りに突き進む私たちの目の前に現れる大きなビル。周囲にもビルはあるがここだけ中途半端にシャッターが下りようとした跡があり、車が囲むように並んでいる。

 なんとなくここから出てくるものを封鎖しようとした跡が見てとれる。そして周囲の飛び散った血が悲惨な惨劇を教えてくれる。


「この辺は臭いが濃い奴が多いぞ」


 私はシュナイダーの背中から飛び降り雷撃を纏った槍を振り回し周囲のゾンビを焼き斬る。

 因みにこの槍既に4本目。定期的に道路標識を切り補充してたりする。


「ビルの中ってこと? じゃあこの槍は使いにくいか。それじゃあ!」


 そう言って投げつけた槍はゾンビたちを串刺しにしながらビルの入り口のガラスをぶち破る。ビルの中から雷鳴が響き一瞬目映い光を放つと焦げ臭い死臭が少し鼻を擽り私を不快にさせる。


「詩、臭いが散る。相変わらずお前は無茶苦茶やるな」


「うっさい。手加減なんかしたってどうしようもないんだから。助かる見込みがあるんなら手加減するっての」


 シュナイダーの言葉に少しイラッとした私が答えると鼻をフンッと鳴らすシュナイダーが私の先を歩き始める。


「まあな、こういう手合いってのは何回やっても慣れるもんじゃないしな。こんな後味の悪い気分にさせる戦いはとっとと終わらせるぞ。だがある意味オレらで良かったんじゃないか。こっちの人間じゃあ手加減して犠牲が増える、そんな気がするぞ」


 割れたガラスを踏み砕きながら歩くシュナイダーの後を私も歩く。


「シュナイダー……」


「なんだ?」


「まともなこと言えるんだ。私ビックリ」


「お前オレをなんだと思ってる!」


「変態」


 それ以外何があるんだってくらい即答すると黙るシュナイダー。傷つく奴ではないだろうと思いながら黙って後をついていくと何やら低く渋い声で語り出す。


「詩よ、男は(みな)変態だ。ただその欲望をどれだけ抑えられるかで外面(そとづら)を保っている。つまりだ欲を抑えることのないオレは純粋。そう純粋な変態だ」


「なんじゃそりゃ。結局変態じゃん」


 どうでもいい会話に少しだけ気が楽になった私はビルの中にあって一番血が濃く死体が多い場所にたどり着く。非常階段の文字がぼんやり光る扉は崩壊しており地下へと向かう階段が私たちを呼んでくれる。


「ま、ここしかなさそうだね」


「だな、地下迷宮みたいなものか?」


「そこまでめんどくさいことはないでしょ。普通のビルなわけだし」


 階段を降り半壊した扉を通ると更に鉄の階段が続く。空っぽな空間に靴で鉄を叩く音が響く。

 前を行くシュナイダーから足音がしないのは肉球が優秀なのだろうか。そもそも人間から犬になって肉球ってどんな感じなんだろう? 聞きたいけど「肉球さわれぇぇぇ」とか叫びそうだしあんまり話しかけたくなかったりする。


 私だけが発していた足で鉄を踏む音が止むと目の前に崩壊した扉があり薄暗い小さな部屋を挟んでもう1つ外れかかった扉が見える。


 血の匂いでむせかえるような部屋に入ると外れかかったドアの下に下半身を踏まれたのか

 ズタズタになった足で立つことも出来ず這いずる白衣を着たゾンビがズルズルとこちっちへ向かってくる。


 シュナイダーが右の前足を振り上げると3本の炎の軌跡が走り男を切り裂き燃やす。


 白衣のポケットから銀色の物体が飛び出し床に落ちるとカシャンと金属音が響く。それを私は拾い上げると丸いリングに複数の鍵がぶら下がっていた。


「鍵か……」


「どうした先に進むぞ」


「ん、そうだね行こう」


 鍵を持って私とシュナイダーは血にまみれた通路を歩く。イメージとしては沢山のゾンビが待ち構えているかと思ったけど殆ど地上に出たのか大した数がいないのでうろつくゾンビを倒していく。


「ねえ、気付いた?」


「ああ、このゾンビの配置、あからさまにオレらを誘導しているな」


 ゾンビが居れば倒して進むのだがこのゾンビたち一体ずつで行動していて倒すと微妙な位置から別のゾンビが飛び出してきてそいつを倒す為に移動してしまっている。


「私たちを遠ざけたいのか、逆に自分のところに誘導しているのか。どっちだと思う?」


「そうだな。準備が出来てないから時間稼ぎ中って可能性もあるぞ」


 私はある部屋の前に立ち止まるとすぐ横にあるドアのノブに鍵を突っ込み鍵を回す。カチッと音を立て開く。


「開いた。中に気配は……やっぱ、ありありだねぇ」


 ドアをそっと開け半開きになったその隙間をシュナイダーがサッと滑り込み、体に纏う風を部屋の中へと流しその空間に大きな風の流れを作る。

 机や椅子、パソコンや紙とかラックやらが吹き飛んでいる今、この部屋がなんだったのかはよく分からない。


 きゃあー! とかうわぁー!? と悲鳴が上がっているのでやはり人はいるようだ。

 辺りの物が散らかる中、物陰に隠れ寄り添いながら私たちを見る男女4人。

 私はコホンっと咳払いを一つしてなるべく脅かさないように優しいトーンで話しかける。


「ちょっとお尋ねしたいんですけど」


「ひいっ!?」


 あ、なんかこの反応前にもあったな。私は顔を擦ると鼻が長い……

 あまりにも馴染みすぎて忘れていたけど私今天狗のお面にてるてる坊主だった。

 怯えた目で震え私たちを見る男女になるべく優しく訪ねてみる。こんな格好だけど。


「この施設の中で音があまりしない……えーと防音室みたいなところあります?」


「じ、実験室の部屋。ここから北のエリアの区画に4部屋。た、多分そこは密閉されて音が外に漏れないから」


 1人の男の人が恐る恐る答えてくれる。


「あーそこかなぁ、さっきから不自然に音が拾えてない空間があるし、うちの犬が匂いを嗅げないってぼやいてるし」


「あ、あのきみは一体……」


 教えてくれた男の人が怯えながら聞いてくる。……てるてる坊主天狗仮面と変態犬のコンビでなんと名乗れば良いのだ。


「な、名乗りたくないです!」


「えっ」


 男の人の「えっ」を背中に受けてとっとと部屋から出てドアを閉め鍵をかけると北側のエリアへ向けシュナイダーを連れて向かう。


「詩よ、あれで良いのか」


「うっさい、名乗りたくないんだからあれで良いの! さっさと行って終わらせるよ」


 シュナイダーにキレながら自分の今後の格好についてちょっぴり考える私なのである。

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