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巧血の乙女は宇宙をも救う  ~現世に転生し少女、血でしたためる漢字にて宇宙人を殲滅するんです~  作者: 功野 涼し
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私始動!もっと選択肢なかったかなぁ

 荷物を運び終えて掃除をしていたとき、何だか嫌な感じがして玄関に向かうと、美心が男の人に話しかけているのが目に入る。


 ゾクッと嫌な感じが背中を伝うと同時に私は身体中を強化し、美心の元へ向かう。

 男が大きく口を開いたとき、躊躇なんかは一切せず床を蹴り、一瞬で間合いを詰めると男の腹部に蹴りを入れ外へ吹き飛ばす。


 地面を転がる男に追い付くと、うつ伏せになっているその首根っこを掴み、引きずって人気のない路地裏につれていく。そのまま顔を塀に叩きつけると腕を締め上げようとする。


「折れてる……ていうかこれって」


 私は男の右手が既に折れ、あり得ない方向を向いていることに気付く。じっくり観察すると足も折れているっぽい。

 そして左肩になにか貫通したような穴が空いているのを見つける。


「なんだろ? 小さな何かが通った跡」


 私が観察していると暴れだす男。その様子はおよそ人間とは思えない、知性を感じさせない動きで、ただ手足を動かし、体を捻らせもがいているだけにしかみえない。


「一応聞くけどさ。あんた名前は? 何しにきたの?」


 私の言葉は届いていないのだろう、暴れ続ける男を私は地面にほうり投げる。地面に転がった男は、これまた人間の動きとは思えない手足の使い方で立ち上げる。

 操り人形が糸に引っ張られ、無理やり立ち上がる感じとでも言えばいいだろうか。


「うわっ! 気持ちわるっ」


 素直な感想を述べる私を、襲わんと向かってくる男を蹴り飛ばす。人を蹴ったというよりは、人形を蹴った感じで、男は力なく塀に叩き付けられる。


 ズリズリと塀に沿ってズレ落ちる男の首があり得ない角度に曲がって、大きく口を開くと中から勢いよく何かが飛び出てくる。


「なんじゃこれ?」


 それを右手の人差し指と中指で摘まんだ私の感想はそれである。


 そこにはうねうねと、のたうち回る先端に鋭い爪が付いた大きいミミズみたいな生き物がいる。

 太さは一般家庭で使うホースぐらい? 長さは30センチくらいだろうか。


「なんか最近触手みたいなものばっかり見るけどこれが宇宙人なのかな? いや人型じゃないから生物? お前話せる?」


 取り敢えず会話を試みるが、うねうねと動くばかりで話しにならない。しばらく眺めてみるがどうしようもなさそうなので左の指を犬歯で噛み切り、血を流すと宙に『火』を描く。

 そのまま叩き付けると燃え上がる宇宙生物っぽいもの。


「おぉ! よく燃える。火に弱いのかな」


 バチバチと音を立て燃える宇宙生物っぽいものを観察する。


 生臭い変な臭いがする……


 すぐに炭になり風化するそれを見た後、男を見ると既に事切れていた。


「う~ん、寄生生物みたいなものなのかな?」


 男の人は一先ず置いて、この現状がなんなのかを考えながら、老人ホームへ戻ると美心が駆け寄ってくる。


「詩大丈夫? さっきの人は?」


「え、あぁ~さっきの人は……か、帰ったよ。そう、お家に帰った」


 当然と言えば当然の疑問だろう。私が蹴り飛ばし、路地裏へ引きずっていった男の行方を、美心が聞いてくるのは当たり前だ。


 そもそも現世で戦う気なんてなかったから、こういうとき何て言っていいか分からない。

 前世なら「討伐したから安心しろ」とか言えるのに、今言ったら警察に連れて行かれそう。


「帰った? そもそもあの人なんかおかしくなかった? 詩もなんか凄い動きしてたし」


「えっと、えーとアイツ美心にセクハラしようとしてたからねっ、ほら、助けなきゃーって、火事場のバカ力って言うのだよきっと。あーびっくりしたわー、まさか私にこんな力がー」


 完璧な言い訳をする私を、疑いの眼差しで刺すように見てくる我が親友。


「嘘だぁ! 詩隠し事下手くそだからすぐに分かるよ」


 完璧な嘘も幼馴染みの美心には通じないようである。観念するか……あ、でも何て言えばいいんだろ?


 悩む私は……


「う、詩……?」


 私は美心を抱え、老人ホームの玄関に飛び退くと私たちを囲う様に現れた3人の男女を睨む。


「ちょっとごめん。待ってて」


 美心をそっと降ろすと3人の内の1人の男に一気に詰め寄りボディブローを決め、体をくの字に折りもたげる頭に踵を落とし顔面を地面に沈める。


 そこから素早く横に滑る様に移動し、肘を女性の腹に打ち込み右手を掴み脇に肘を捩じ込み、沈む体を背中で背負うとそのまま投げ最初の男の上に叩き付ける。


 背後から来ていた男に向かって跳び、肩に手を付き逆立ちをするとぐるっと一回転して後頭部に膝を当てる。そのまま体重を乗せ先に倒れている2人の上に顔面を埋めさせる。


 3人の山にのったまま自分の腕を、隠していたナイフ切ると、流れる血を筆で掬い『雷』の文字を山の天辺に描き叩く。

 地面を這い、雷鳴と共に上空に昇る雷の柱が周囲を一瞬、光に包む。


 美心の手前、燃やすより感電の方が良いかなって配慮だったんだけど……うわーメチャクチャ睨まれてる。


 頭をポリポリ掻き、視線を泳がせ、時々驚いた顔で自分の手を見たりしながら美心の元へ歩いていく。


「いやービックリしたっ、私もビックリ! 人間追い込まれると、こんな力が発揮されるんだねぇ。わービックリ」


 完璧な演技を披露してみせるが、効果は薄い様で美心は睨んだままである。やはり長年の親友には通じないのか……


「詩! 嘘つかない!」


 ああ、これ美心のマジモードだ。日頃サバサバして心の広い美心がキレたときになるレアな状態だ。

 こうなると許してくれるまで徹底的に攻めてくる。


「絶対何か隠してるよね!」


 詰め寄ってくる美心にタジタジな私だが、再び不穏な気配を感じると美心を抱え、老人ホームの中に入りさっきの騒動でロビーに集まってきた職員さんたちの元へと走る。


 美心を抱える私に驚かれ、簡単に状況を説明すると戸惑う大人たちに


「いいから早く! 建物を全部施錠して外に出ない、そして外の音に反応しない! 分かったらすぐにやる!!」


 威圧を含んで強引に納得させる。混乱している村人には丁寧に説明するより、これが一番手っ取り早い。

 そんな私に驚く美心を引っ張り、2階に上がると同じ学校の子達が集まっていたので、美心を置いていこうとすると腕を掴まれる。


「どこへ行くつもり」


「どこって……ちょっと野暮用が」


 強引に歩く私の腕を掴んだままの美心と廊下を進む。無言で歩いてみるが、無言でついてくる。


「はぁ~分かった、分かったから手を離してよ。事情はちゃんと説明する。今はこの騒ぎを止めたいからその後でいい?」


 観念して両手を上げる私を見てニヤリと笑う美心。この子は本当に(したた)かというか敵わない。


「ま、逃げ場はないし、後でじっくりお茶でも飲みながら聞こうかな。勿論、詩の奢りでねっ」


「美心の方が魔王より怖いよほんと……分かった。約束するから今は行かせて」


 美心が頷いて手を離してくれる。そのまま近くの倉庫に入るとさっき運んだ備品の中から黒い遮光カーテンを手にして纏う。


 てるてる坊主再びである。


「なにしてんの?」


「あ、ほら、このまま行くとさ顔バレるから、顔隠すものないかなって。例えばお面とかさ。最悪布に穴空けて目だけでも隠せば良いのかな?」


 ごそごそする私に美心が笑顔でズイッと立派な木箱を差し出してくる。

 その木箱に敷き詰められた座布団に鎮座するお面。


 オタフク・ひょっとこ・天狗……おぅ、もう少し選択肢が欲しいとこだね、これは。

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