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巧血の乙女は宇宙をも救う  ~現世に転生し少女、血でしたためる漢字にて宇宙人を殲滅するんです~  作者: 功野 涼し
潜る!潜る!

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ミローディアの奏でと共に

 エーヴァが鞄から取り出した2本の鉄の棒。

 よく見ると1本にはグリップがついており持ち手と分かる。

 持ち手の方をもう1本の棒にあるジョイントにはめ込むと1本の長い棒になる。それを2枚の長方形が弧を描く鉄の板を挟む塊にあるジョイントに差し込む。


 長方形の板の間から顔を覗かせている弧を描く鉄の背に空いてある穴に指をかけ引っ張ると鋭く尖った先端が姿を表す。

 エーヴァが満足そうに肩に担ぐそれは大きな鎌。死神が持つような大鎌はエーヴァの身長を軽く越え2m近くある。

 先端こそ鋭く尖っているが刃はなく代わりに色の違う薄く黒い、刃を模した鉄がついている。


「これは予想以上だな。じいさんいい仕事するじゃねえか。んじゃあいくかあたしの新たな相棒『ミローディア』!」


 エーヴァは大きく一歩踏み出すととミローディアと呼ぶ大鎌を振るいウージャスの胸元に先端を突き立てる。

 刃のないミローディアだが刃を模し黒い鉄にエーヴァの魔力が集まり空気を細かく振動させると、切るのではなく振動で細かく砕きながら鎌を進めていく。上半身を縦に割られたウージャス。


「いいなこれ。この大きさでこの軽さ。あたしの魔力を通しやすい鉄を中心に通し疑似の刃を作ることで魔力を無駄なく留める。2種類の鉄を合わせる加工技術いつの世も職人あってこそだな!!」


 ミローディアが軌跡を残した後に体を真横に切られ崩れ落ちるウージャス。間髪いれずに炎に包まれたシュナイダーが突進し内部にいると思われる寄生体に止めをさしていく。

 ただ簡単に切れる個体はただのウージャスのみ、鎧を装備し武器を持つ個体は攻撃を防いでくる。


「大剣と違ってもう少し繊細に振る必要があるってことか。この辺はもう少しあたしが慣れるかしかないってことか」


 攻撃を防がれはしたがエーヴァは強引に力で押してそのままウージャスを地面へ叩きつける。

 ミローディアを鉄の棒で必死に防ぎ抵抗するウージャスだったが顔面に青白く光る拳が叩きつけられると体が大きく跳ねた後ピクリとも動かなくなる。


「まったく、相変わらず強引な戦い方なのです」


「ふ~んその鋭い魔力は確かにマティアスのそれっぽいな。うそじゃねえってことか。だけどよお前なんか色々変わりすぎだろ?」


 呆れた表情の思月に尖った歯を見せながら笑うエーヴァを見て思月も笑ってしまう。


「面白いものなのです。生まれ変わって姿形は違っても間違いなくイリーナなのです。スーはちょっと性格にも変化があったというのにあなたは変わらないのです」


「あん? 今はエヴァンジェリーナ・クルバトフってんだ。エーヴァでいい」


「そうなのですか。スーは思月(スーュエ)、ユエユエとでも──」


「そんじゃあスーって呼ばしてもらうぜ。じゃあいくぜスー!」


「本当に変わらないのです、エーヴァ」


 2人が向かってくる3匹のウージャスを見るとニヤリと笑う。

 思月が走って向かうと1匹のウージャスが振るう腕の下をくぐり伸びきった肘関節下から突き上げへし折ると続けざまに膝を蹴って折り尻餅をつくウージャスの腹部を踏みつけ倒すと、その足を支点に乗り地面に張り付けられたウージャスの胸元に掌底(しょうてい)が落とされ青白い光が駆け抜けると動かなくなる。


 その近くでミローディアを振るうエーヴァが真横に振り1匹の腹部に先端を突き刺すとそのまま大きく一回転させ先端が上を向いている状態で肩に担ぐ。

 大きく一歩踏み込み刃先でバタバタと動くウージャスごと全力で振り下ろすともう1匹のウージャスの肩に刃先を突き立てるが勢いは止まらずそのまま地面に刃を刺し縫い付ける。


「先端だけに魔力を集めれば地面ぐらいなら砕けるか。ま、このまま地獄へ落ちな」


 エーヴァが奏でるフルートの音色がミローディアを伝い内側から破裂する2匹のウージャス。

 離れたところで2人がウージャスを倒す姿を眺めるのは毛むくじゃら2匹。


【スー! 白雪を置いていったらダメよ~! 燃費悪いんだから2人で共倒れになっちゃう! ほら犬ちゃん走って!】


 シュナイダーに股がる白雪がペシペシと背中を叩いて思月たちを指差す。


「いや……そもそもお前なんなんだ?」


【スーの可愛いぬいぐるみ、白雪よん♪ 同じ毛むくじゃら同士仲良くしましょうよ! だから早く走ってよん!】


「いや答えになってないぞ。そもそもオレの背中に股がっていいのは麗しき女性のみだ! 勝手に乗りやがって」


【あらんそれなら条件バッチリじゃないの。白雪は麗しい乙女よ】


「なに!? そうなのか!」


 乙女と聞いてちょっぴりテンションが上がったシュナイダーが背中に股がっている白雪を振り返ってまじまじと見るがすぐにシュンと肩を落とし頭と尻尾が垂れる。


「いやちょっと無理だ」


【なによ無理って! こんな可愛い女の子に向かって失礼じゃないのよ! お前なんかこうよ!】


「や、やめろ! 耳をグリグリするな! やめ、やめてっ」


 シュナイダーの耳を持ってふさふさの手で耳の中をグリグリする白雪を乗せ走り始めるシュナイダー。


【やれば出来るじゃないのよ! ほれほれっ】


「ぬおっ~なんたる不覚っ!? こんなわけも分からないヤツに攻められるとは!!」


 大土鼠とオケラによる地中破壊により送電がされていない真っ暗な街中を白いウサギを乗せた赤い犬が走り回る。


「何やってんだあれ? そもそもあのぬいぐるみはなんなんだ? なんで動いてやがる?」


「スーの大切なものなのですが何で動いているかは分からないのです」


「まあ色々気になることはあるけど今はあっちの魔力の反応に向かうとするか。多分詩だ」


 エーヴァの指差す方へ向け2人と2匹は向かうのだった。

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