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第三話 アクヤちゃんとぶらり竜車の旅

 アクヤちゃんの竜車で行く旅は快適でした。

 一緒にお供をしてくれているお爺ちゃんの御者さんと綺麗な侍女さんはアクヤちゃんが幼いころから信頼を置いている人たちで私も面識があります。

 広い車内から外の景色を眺めながら思い出話に花を咲かせました。


 荒野で野宿は危険ですので、日が沈む前には近くの町や村に入り宿を取ります。

 夕食はとてもとても豪華なものでした。

 やせ衰えて死にかけていた雄鶏ではなく、丸々と太った仔豚。

 しなびてスープに入れないと食べられない野菜ではなく、そのまま食べられるほど新鮮な野菜のサラダ。

 それらに侍女さんが高価なスパイスやドレッシングをかけてさらに味を引き立てます。

 あまりのおいしさに私は骨やヘタまでしゃぶりついて食事を堪能しました。

 アクヤちゃんはそんな私を何故か悲しそうな目で見ていました。


 そして、4日目。

 朝に出発した竜車はあと数時間以内にフェブリアルに到着する模様です。

 旅の終わりが近いと察した私とアクヤちゃんはさみしさが募ってきました。


「ねえ、キサラ。

 あなたやっぱり、街に戻ってきたら?

 私がお父様にお願いして罰をなかったことにしてあげるわ」

「ダメだよ、アクヤちゃん。

『権力とは法を破るための力ではなく、法を順守させるための力である』

 学院で習わなかった?」

「なによ、初等学院しか出ていないくせに偉そうに!」


 アクヤちゃんの気持ちは嬉しいです。

 でも、彼女や彼女の御家に迷惑をかけるわけにはいきません。

 男爵令嬢が剣を振るっただけで追放されてしまうのです。

 伯爵家といえど、司法に対して不正を働きなどすれば、揚げ足を取られかねません。


「心配しないで。わたし頑張るから。

 開拓事業で功績を上げた場合、早く追放期間が終わるんだって」

「あなた、そんなことができると思ってるの?

 開拓事業で功績って何!?

 畑でも耕すの!?

 それともモンスターの駆除!?

 私やあなたみたいな貴族の娘、家の権威がなくなればただの人以下なのよ!

 役に立たないに決まってるわ!」


 ヒステリックに怒るアクヤちゃんをなだめようと手を伸ばした、その時でした。


 グオッ! と竜車が加速し、車の中にいた私とアクヤちゃんはシートに押し付けられます。


「なにごとっ!?」


 アクヤちゃんが叫ぶと同時に御者台側の小窓が外から開きました。


「お嬢様! 申し訳ありません!

 モンスターに捕捉されました!!

 速度を上げますのでしがみついてください!!」


 侍女さんがそう叫んだので私たちは窓から身を乗り出して外を見ます。

 すると竜車の後方30メートルくらいの位置にものすごい速さの二足走行で近寄ってくるモンスターの姿があるではないですか!

 人間と似た形ですが、背丈は3メートル以上あり、腕や脚の太さは丸太のように強靭。

 釣り上がった瞳に大きな牙の生えた口。

 見るからに強そうで怖そうなモンスターにアクヤちゃんはパニックになります。


「な! なにあれえ!!」

「オーガです! 極めて強力なモンスターで並の兵士では10人がかりでも勝てません!」

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