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第十九話 大勝利です

 ムーンベルトのメンバーを見つけてホッと胸を撫で下ろします。

 しかし、酷いことを考える人たちもいたものです。

 ルナティックウルフの牙や体毛は高い値段で売れるそうですが、本気で殺しにかかってくる危険モンスターのため、誰も手を出さないようです。

 奴らも縄張りに入られない限りは手を出してこないそうなので。

 とはいえ、人質を取ってまでやらせますか?

 単純にお金だけでなく、恨み妬みがあったんでしょうね。

 冒険者界隈の闇を見た気分です。


 ある程度モンスターを蹴散らすと、後ろからやってきたナーガさんが倒れている二人を抱え起こしながら嬉しそうに言います。


「うはっ! 想像以上だな!

 オマエの本気ってやつは!」

「本気? 誰のですか?」

「おいおい、まだ底があるのか?」

「今回の目的は救出ですので。

 それに……一匹一匹は大した敵じゃないですし本気の出しようがないです————よっ!」


 飛びかかってきたルナティックウルフを真っ二つに両断します。

 力の差が分からないほど頭が悪そうなモンスターじゃないのですが、どうやら狂暴化しているみたいですね。

 全滅させる以外戦いは終わりそうにありません。


「キサラ! アタシはコイツらをムウさんの場所まで下げる!

 援護射撃してもらうからアタシの合図は聴けるようにしておけ!」

「あのムウさんって人、戦えるんですか?」

「ククッ、自惚れんなよ、新人。

 ハーフエルフのムウって言えばフェブリアル最強の魔術師マジックキャスターだぜ。

 避け損ったらひとたまりもねえから気をつけなっ!」


 ナーガさんが下がります。

 ムウさんというエルフはこめかみから血を流していますが、とても綺麗な方です。

 透き通るような肌や金色の髪は誰もが想像するエルフそのものですが、体つきはとてもグラマラスでマントの下に着けた緑色のビキニアーマーから色々なものが溢れ出しそうです。

 できれば明るい場所で観たいです。


 それはさておき、一人で10頭以上のルナティックウルフを倒すのはなかなか骨が折れそうです。

 私の危険を察知はしているらしく、慎重にヒットアンドアウェイを繰り返してきます。

 集団で一斉にやられると厄介です。

 お父様の剣と剣術で攻撃力こそ高いですが、まともにモンスターの攻撃をくらったら一巻の終わりです。

 私、普通の女の子ですので。


 モンスターの攻撃を凌ぎながら反撃の機を窺います。

 そうしていると、ナーガさんが声を上げます。


「準備できた!! こっちに向かって走って来い!!」


 人使いが荒いです。

 街に戻ったら美味しいデザートでも奢ってもらいましょう。


 踵を返し、進路上にいるルナティックウルフを一撃で斬り飛ばします。

 するとムウさんがこちらに向けて手のひらを向けているのが見えました。

 その掌の前には淡い緑色の光球がはち切れそうに膨らんでいきます。

 直感的に危険なものであると悟りました。


「とベェ!!」


 ナーガさんの声に合わせて私は目いっぱい上に向かって飛び上がりました。


「【メギド・サンダー】!」


 ムウさんがそう唱えると緑の光球が稲妻に変わり、地を這ってルナティックウルフの群れに襲いかかりました。

 見下ろしたその光景は雷雲が地上に産まれたかのように壮絶で美しさすら感じます。

 ほとんどのルナティックウルフが動かなくなり、残った個体も怯んでいます。

 勝負どころです。



「【エンジ流剣殺法――奏名剣ソナタ六番…………『パッショネイター』】」


 全速力で敵陣を駆け抜けてすれ違いざまに突きを見舞っていく連続剣。

 動きを鈍らせたルナティックウルフを一匹一匹絶命させ、戦闘は終了しました。

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