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第十八話 ミミズは食べ飽きました

 私が首筋に当てたナイフはモンスター退治に使われる刃幅が広いモノです。

 これで斬られたら人間なんてひとたまりもないでしょう。


「な、何の真似だ!?」

「人質を取り返したんですよ。

 あなた達はキチンと法の裁きを受けてもらいます。

 監禁の上、脅迫してるんですよね? ムウさんを」


 フード姿の女達は一斉に武器を取りました。

 だけど、その手は震えています。

 人質ごと私を殺すような覚悟はないのでしょう。


「やめときな。

 オメーラじゃ束になっても敵わねえよ」


 洞窟の入り口から聴き慣れた声が聴こえてきます。


「ナーガっ!? どうしてここに!」

「エルフ族の耳舐めんなよ。

 雑音の多い町中ならともかく、森の中なら1キロ離れたところの話し声だって拾える。

 しかし、バカだね。

 人質を取るならそいつは大はずれだ。

 アタシの寝込み襲う方がワンチャンあったかもよ」


 ケラケラと笑うナーガさんですが、槍を持つ手は鎌首をもたげる蛇のようにいつでも打ち出せるようになっています。

 それを察したのか、彼女達は地面に武器を落としました。



 彼女たちを拘束し、フードを引き剥がすとナーガさんは顔をしかめました。


「どいつも見たことあるツラしてやがる。

 全員フェブリアルの冒険者だ」

「ああ、やっぱり」

「……えらく落ち着いてるな。

 普通、ここは驚いたり、怒ったりすることじゃないのか?」

「予想どおりでしたので。

 怒らなきゃいけないほど怖い思いもしてませんし」


 道中の口ぶりや態度で十中八九そうだと思ってました。

 牢屋で転がされている二人も拷問されたりしているわけじゃありませんし、人を傷つけるのに慣れている感じがしません。


「う……ん……」


 牢屋で眠っていた二人が目を覚ましました。

 ナーガさんが声をかけます。


「おはようさん。

『ムーンベルト』のおふたりさん。

 えっと、確か五人パーティだよな。

 ムウさん、とあと二人はどこ行った?」


 しばらく状況が理解できていない様子の二人でしたが、ロウソクの明かりに照らされたナーガさんの顔を見て、縋りつくようにして声を上げます。


「た、助けてください!

 ムウ達は……コイツらに脅されてルナティックウルフの巣に!!」


 憎々しげに自分たちを捕らえていた女達を睨みつけています。

 ナーガさんは面倒そうに頭を掻きます。


「成程……人質取って無理やり危険モンスターの討伐をさせようって腹か」

「危険モンスター?」

「容赦なく人間を殺しにかかってくるモンスターのことだよ。

 しかも、ルナティックウルフといえば近隣じゃ最悪レベルの討伐難度のモンスターだ。

 単体の戦闘力もさる事ながら、群れで連携してくるところがエゲツない。

 一人でいるところを取り囲まれたら私ですら死を覚悟するね」


 ソロでの冒険は死と隣り合わせ。

 ナーガさんは私にそう聞かせてくれました。

 自分より強いモンスターと相対した時に逃げる術がなく、数の不利を覆せない。

 殺意を持たないモンスターが相手でも当たりどころが悪ければ死んでしまうのが冒険者の仕事です。


「実質ソロみたいなもんだっ!

 ……ムウさんみたいな上級冒険者が私たちのパーティにいる事がおかしくて……だからコイツらに目をつけられたっ!」

「ムウさんはきっとライとリュリュを庇いながら戦ってる!

 そんな戦い方をしてたらいくらムウさんだって!!」


 ムーンベルトの二人が嘆くように声を上げます。

 ついさっきまで自分が捕まっていたのに仲間の心配をするあたり、いい人達ですね。


「ナーガさん。

 そのルナティックウルフってどこにいるんですか?

 あと、美味しいですか?」


 私は尋ねます。


「ミミズよりは美味いと思うぜ。

 場所はコイツらに案内させればいいだろ」


 ナーガさんはそう言って誘拐犯の髪を掴んで持ち上げました。


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