第688話 ログアウト
毎度の如く遅れてごめんなさい...。どうでもいいけど今年は授業にバイト、就活に卒業研究と盛りだくさんで泣きそ...逆に来年めちゃくちゃ暇になりそう。
あのあとガンヅさんと合流してから程なくして汽車はゆるやかに出発した。やはりというか、悪夢の通りガンヅさんも何者かに襲われたみたいだったけどそーちゃんとともちゃんが撃退してくれたので怪我ひとつ無い。
みんな無事で良かった。
「すぅ......すぅ......」
「「......。」」
...まぁユウトくんが眠っている今、車内は完全にお通夜状態なんだけどね。
『...そりゃ(目の前で幼女がバーサーカー状態になったら)そう(ドン引きする)でしょ。』
『...うぅ...副音声が聞こえてくる。』
『まぁまぁ...詳しくは知らないですが聞くところによるとあの龍神の秘剣によるものですよね?ならば仕方の無いことじゃないですか。』
『そうだ。...アレはまだ私のように自分の力を抑えられないみたいだからな。私のように。だから次からは私をだな...』
『お姉様嫉妬ですか?』
『んなっ!?そ、そんな訳ねぇだろ!?』
みんなに励まされたのでクヨクヨするのはこれ以上辞めることにする。ただ、あの予知夢みたいな悪夢がこれからも起こるかもしれないと考えるとやっぱり悩まずにはいられないよね...。
「...今日はもう寝ますね。」
「あ、あぁ。その...おやすみ。」
「...はい。」
そうして私はログアウトした。今日も宿題は終わってるし早く寝よう...。
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ここ、は...?
目が覚めると私は自室ではなく、知らない部屋に立っていた。部屋、というよりは...教会?
「...」
私が何かを口に出そうとしても口から声が出ることはない。それどころか体も動かない。
『スカーレットいる?』
『...いないみたいだね。』
いつも私の中にいるスカーレットからの返事もない。視界だけが開けているこの状態はあれだ。...スカーレットが表に出ている時だ。つまり今、私は誰かの体の中にいるということ。
『終わったっすか?』
『...えぇ。』
口から出てくる声はやはり私のモノとは違う。というか今問いかけてきた人の声って...まじっちさんだよね?ということは私はまだゲームの中にいるのかな?...たしかにログアウトしたはずなんだけどなぁ...。
『いつもの降霊術みたいなやつ...ほんとに効果あるんすか?』
『降霊術ではなく降霊祈祷、です。間違えないでください。』
『おっとごめんっす。......それにしちゃあやけに邪悪な気配がするんすけどねぇ...。』
『何か言いましたか?』
『なんでもないっす。』
んー...よく聞こえないなぁ...他に誰もいないんだしもうちょっと大きい声で話してもいいと思うよ私は。...まぁここは教会っぽいから静かな方が良いのかもしれないけど。
まじっちさんよりも背丈が二回りほど小さいこの体の主は教会の外に出ていく。まじっちさんと対面した時の私とほぼ同じ目線だったからこの子は私と同じぐらいの背丈だろう。ちょっと安心。
『っ...』
『どうしたっすか!?』
『い、いえ...なんでもない、です。』
『えぇ...』
突然胸を抑えて立ち止まる少女。けれどもすぐに何事も無かったかのように歩き始めた。まじっちさんもさすがに困惑したようだった。
『私はもう寝ます。貴方は...帰ってください。』
『分かったっす。また来るっす。』
『はぁぁ...もう来なくて───...はぁ...』
少女が古ぼけたベッドに上がり、眠りにつくと私の意識も落ちていく。一体なんだったんだろうこれは...
次の日私はすずに抱きしめられながら目を覚ました。
 




