第680話 因縁対決
もう3月...早いものですなぁ...
「ワォオオオオオオオオオンッッ!!!」
「...私が復讐の相手ってことね。」
刀を抜きながら汽車から降りてリーフェルを見据える。彼女の瞳には憎悪が篭っており、それはまっすぐに私へ向けられていた。
周囲の狼達が襲いかかってくる気配もないので私は少し前に出る。1歩、また1歩とリーフェルとの距離を詰めると狼たちが私の退路を塞いだ。
「グルル...」
「言い訳するつもりはないよ。...やろっか。」
───ビュォォオオオオオオッッ!!!!
───ギィィィィンンッッ!!!
そう言うのと同時に周囲の木々の葉っぱを風で巻き取って私を襲わせるリーフェル。これはただの目眩し。一瞬で背後に回り込んだ彼女の牙を2本の刀で受け止めて弾き返す。
「ガルッッ!!!」
「は──...っ!!」
───ガギィィィンッ!!
相手の爪攻撃に刀を沿わせようとしたが、飛来する葉っぱが邪魔で慌てて防御に切り替えた。体力は少し減ったが、まだまだ余裕はある。
「っ...!?」
「グラァァッッ!!!!!」
───ギギガギギギギギガガガギギギィィィンッッ!!!
後ろ足だけで立ったと思ったら前足で滅茶苦茶に引っ掻いてくる彼女。空間に残る白い斬撃に刀が触れると弾かれてしまうので少しずつ下がりながら体勢を整える。
「ガゥッッ!!!」
「お見通しッ!!」
───ギィィィィ...ンッ...!
「グルルル...」
「...それは予想できなかったな。」
やはりと言うか葉っぱが視界に映りこんだ瞬間に私の首に食らいつこうとしたので口の中に刀を突っ込んだ。しかし、上顎から脳天を突き破る前に刀が牙に挟まれてしまった。
もう一本の刀で斬りさこうとすると呆気なく手放して距離を取られた。
『ともちゃん大丈夫?』
『むふん!痛くも痒くもないです!』
『そっか...良かった。それとそーちゃんも一緒に頑張ろうね。』
『ふん。言われなくとも。』
そーちゃんの態度に苦笑いしながら私は再び刀を構える。
「ガァァァッッ!!!」
「っ...」
相手の姿がぶれる。2頭、4頭と数を増やすリーフェル達はゆっくりと私を囲うように動く。
───ギギギギギィィィィンンッッ!!!
ほぼ同時に飛びかかってくる彼女たち。噛みつきや引っ掻き、風魔法で斬り裂いてくる子もいる。ただ、相手の体が大きいからすんでのところで避ければ他の子に体当たりしたりと割と自滅も多い。
───スパンッッ...!!
風魔法をともちゃんで斬り裂く。天力を纏わせた心眼で魔力の流れを見るとどこを斬ればいいのか分かる。魔力の供給が無くなれば自ずと魔法は消える。
『ともちゃんよろしくね。』
『お任せ下さい!!』
私の周囲に展開される風魔法。ともちゃんの神器スキル[トモシビ]は相手の魔法やスキルを受け止めると武器スキルとして使うことができるようになる。それを利用して私も同じ魔法を展開すれば相手の魔法を無効化できるんじゃないかって考えたのだ。
この考えは正解だったみたいで私の視界に葉っぱが写る前に飛ばされるので相手の攻撃がより見やすくなったし、風魔法が飛んできても自動的に逸らしてくれるので相手の風魔法を気にする必要も無くなった。
「ガウッッッ!!!」
──ドゴォォオオオオンンッッ!!!!
急に地面を思い切り踏みつけたと思いきや、ひび割れたそこからたくさんの植物が生えてきた。伸びてくる草木が少し気持ち悪くて空に逃げようとしたが、草が足に絡みついたせいで植物の波に飲み込まれてしまった。
───パチッ......
───ゴアアアアアアアッッッッ!!!!
一瞬で焦土と化す植物達。真っ黒に染る植物だった何かを踏みつけてこちらにやってくるリーフェルは未だに憎悪の籠った瞳を向けてくる。
「...そろそろ終わりにしよう。」
試したいスキルがある。それが決まれば相手は一撃で倒れるだろう。しかし、そのスキルがどこまで効力を発揮するか分からない。
『そーちゃんよろしくね。』
『任せな。』
「グラァァッッ!!!!」
目を閉じて腕をクロスさせながら構える。同じ箇所を本気で1回だけ斬る場合この構えが1番良いはずだ。相手も隙を晒す私を喰らおうと飛びかかってくるがもう遅い。
──神器スキル[カオス]──
──《刀堂流刀術:天新月斬》──
使うと自身を中心とする半径100m以内の世界の理が10秒間変わり、全ての属性の有利不利やスキル効果が逆転するこのスキル。スキル効果が逆転するということは相手の《超斬撃耐性》も逆転するということ。つまり斬撃ダメージは減少するどころか...
「跳ね上がるッ...!!」
────スパ...ン......!
「ワォォオオオオオ
オオオオオン......」
──ゴトンッ...!
死を察して遠吠えを上げるリーフェル。その遠吠えが終わる前に彼女の首が落ちた。




